研究課題/領域番号 |
23560875
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
八重 真治 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00239716)
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研究分担者 |
松田 均 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60118015)
福室 直樹 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10347528)
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キーワード | めっきプロセス / 密着性 / 触媒活性 / ナノ粒子 / 配線 / 金-シリコン合金 / 拡散 / 無電解めっき |
研究概要 |
シリコン(Si)上への金属膜形成は、ULSIなどのnmから太陽電池などのdmスケールまで、幅広く利用されている。金属膜形成法の一つである無電解めっき法は、生産性、均一成膜性に優れ、非導電性材料にも成膜できる特長を持つが、Si上では得られるめっき膜の密着性に課題があった。我々は、これまでにない高密着な無電解めっき膜をSi上に形成できる新規活性化処理法を開発した。この方法の特長は無電解置換析出した金ナノ粒子が特異的に高密着性を発現することであるが、その機構は不明である。本研究では、まず、この機能性発現機構を解明する。次いで、それに基づいて、めっき膜の厚さやパターニングなどの適応範囲拡大、金に代わる低コスト触媒材料開発、ウェハーボンディングなどへの応用展開を目指す。 本研究の方法は、無電解置換析出液すなわち金イオンとフッ化水素酸との混合水溶液にSiウェーハを数秒から数十秒間浸すことにより金ナノ粒子を形成した後に、一般的な無電解自己触媒めっき液に浸して、Si上に高密着な金属薄膜を得るものである。 昨年度までに、Si-金界面に合金相が形成されて密着性が発現していること、密着性がナノ粒子形成に用いる金属塩の濃度や浸漬時間などの条件に依存することを明らかにした。さらに、フォトレジストによるパターニングに成功した。 今年度は、Si-金界面とともに金-めっき膜界面を解析し、空気中で金上に形成することが知られているSi酸化物層が金-めっき膜界面には存在しないこと、めっき膜の剥離によって金ナノ粒子が破断していることを明らかにした。また、7日間程度のエージングにより密着性が向上すること、得られた密着性は長期にわたり安定で200℃程度の熱処理によっても変化しないことを明らかにするとともに、フォトレジストを用いて4インチウェーハ全面にマイクロメートルオーダーの配線パターンを形成することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究実施状況報告書に記載したとおり、当初計画では、平成24年度は「1.めっき膜厚の増大」と「2.金に代わる低コスト触媒材料の探索」、平成25年度は「1.めっき膜厚の増大、パターンめっきなどの適応範囲拡大」と「2.ウェハーボンディングへの展開」を推進する予定であった。平成23年度においてめっき膜パターニングに成功したこと、ならびに現在得られている厚さ1マイクロメートル程度の薄膜でも活用できるデバイスの具体的な提案が共同研究先よりなされたことから、平成24年度以降は、その研究展開を優先するとともに、構造解析の深化を図ることを基本方針とした。これに基づいて研究を推進し、以下の進展が見られた。 Si-金界面とともに金-めっき膜界面を解析し、空気中で金上に形成することが知られているSi酸化物層が金-めっき膜界面には存在しないこと、めっき膜の剥離によって金ナノ粒子が破断していることを明らかにし、機能性発現機構の研究が進展した。また、7日間程度のエージングにより密着性が向上すること、得られた密着性は長期にわたり安定で200℃程度の熱処理によっても変化しないことを明らかにすることで、機能性向上を目的とする研究に進展が見られた。さらに、フォトレジストを用いて4インチウェーハ全面にマイクロメートルオーダーの配線パターンを形成することに成功したことで、生産性の高いパターニング実現の可能性を示すことができた。 以上により、デバイス応用に向けた研究を概ね順調に進展させることができたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画では、平成25年度は「1.めっき膜厚の増大、パターンめっきなどの適応範囲拡大」と「2.ウェハーボンディングへの展開」を推進する予定であった。平成24年度までに、めっき膜パターニングに成功したこと、ならびに現在得られている厚さ1マイクロメートル程度の薄膜でも活用できるデバイス(太陽電池など)の具体的な提案が共同研究先よりなされたことから、最終年度である25年度はその研究展開を優先する。 具体的には、導電性の高いめっき材料として銀などを用いること、およびデバイス特性に影響するコンタクト抵抗などの評価とその改善を図る。これらにより、高性能デバイス製造への応用実現を目指す。共同研究者をはじめとして、学外の企業や大学などの技術者および研究者と積極的に情報交換や共同研究を行うことで、実用デバイスへの応用展開の可能性を探る。 さらに、これらの結果をまとめて、シリコン上の無電解めっきに用いる新規活性化前処理の機能性発現機構とその応用展開をテーマとして学会発表や論文投稿による成果発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、研究進展に伴い、大型の反応容器や評価分析用の消耗品購入による物品費が当初見込みを上回ったことで、経費合計が当初の予定額を上回り昨年度より繰越額が減少した。次年度は、新たなめっき材料を検討するための試薬やパターニングに必要な機材や薬剤などの物品を購入するとともに、引き続き共同研究開発機関での試料作製および成果発表のために旅費を活用する。
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