薄膜積層型圧電超音波センサを駆動するための電磁誘導コイル最適化を実施し、圧電薄膜積層型超音波センサと組み合わせて20cm以上遠方から圧電薄膜積層型超音波センサの駆動が可能であるという実験結果を得た。次に400度まで電磁誘導コイル及び薄膜積層型圧電超音波センサを加熱し、超音波センサとしての性能に対する影響を確認した。その結果、コイルのみを加熱した場合は検出感度に変化がないこと、圧電薄膜積層型超音波センサを同時に加熱した場合も感度低下は発生するが十分な受信信号強度が得られることを確認した。次に試験パイプを用いて電磁誘導法によるガイド波の送受信を試みた。周方向に成形・添付された4つの薄膜積層型圧電型超音波センサを同時に安定して駆動する工夫が必要であったが、200kHzに中心帯域を持つパイプガイド波の送受信信号を確認することができた。ただし受信信号のS/Nが不十分であるという結果になったが、その原因については、薄膜積層型圧電型超音波センサ、フレキシブル薄膜積層型圧電型超音波センサ共に、中心駆動周波数が9MHzにあり、パイプガイド波として駆動するための駆動周波数200kHzと不整合があることがわかった。薄膜積層型圧電型超音波センサの製作メーカと協議した結果、製作上の困難さは伴うものの200kHz中心帯域の薄膜積層型圧電型超音波センサの製作は可能であり、薄膜積層型圧電型超音波センサを用いたパイプガイド波送受信システムの実用化条件を明らかにすることができた。最後に大きさの異なる複数の貫通穴をパイプに加工し、検出感度を確認した。その結果、10mm径までの貫通穴は充分なS/Nで信号を検出することができた。パイプで腐食が進み、貫通する直前には10mm程度相当の円形の大きさになっていることが多く、開発した検査システムが将来、構造物として用いられるパイプの検査に適用可能であることを確認できた。
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