研究概要 |
大面積を短時間で加工するために、レーザー光1ショットで貫通穴を形成するシングルショット加工での穴あけを実施した。使用した試料は厚さ25μmのポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂である。実験に使用したレーザーは、アドバンストオプトウェーブ社製の半導体励起固体YAGレーザー、Awave-355である。基本波長は1,064 nmであるが、非線形光学結晶により355 nmの紫外線に変換して試料に照射した。パルス幅は10 nsである。集光レンズには焦点距離56.0 mmのテレセントリックタイプのfθレンズを使用し、貫通穴の穴間隔は光学系の制約から20μmとした。 パルス周波数1~3kHzまでは穴と穴とが重なることもなく綺麗に貫通穴が形成された。しかしパルス周波数が4kHzを超えると穴と穴とが重なり始め光を通すには不適当な品質となった。加工プログラムではパルス周波数に対応させてビーム走査速度を変化させており、どの周波数においても穴間隔は20μmの等ピッチとなっているはずであるが、入熱の影響のためか4kHz以上では乱れが発生した。パルス周波数2kHzで縦52 mm×横62 mmの大きさの拡散板を作製した。出射面側で直径7.1μmの貫通穴が形成されており、出射面側開口率は11.3%となった。透過照明により、各穴は確実に貫通しており、光が通り抜け可能なことを確認した。 現状の最大の課題は、加工時間の短縮化を図ることである。ある一定の開口率のもとにおいて、穴径が微細化するほど穴ピッチを詰めなければならず、そのために加工すべき穴数が膨大なものとなる。この課題に対してはピコ秒レーザーが最適であると考えられる。ピコ秒レーザーはパルス繰り返し数が高く、パルス幅がナノ秒レーザーに比べて1000分の1以下と短いのでアブレーション効果が高く、より少ないショット数での貫通穴の形成が期待できる。
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