研究課題/領域番号 |
23560883
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
宗内 篤夫 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (30455141)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バリヤー放電 / オゾン / ホウケイ酸ガラス |
研究概要 |
バリヤー放電によるオゾン発生には、電極に誘電体を設ける必要がある。この誘電体としてこれまで鉛ガラスが使用されてきたが、RoHS規制により鉛ガラスの生産が中止となった。そこで本研究では、これに替わる誘電体の研究を行うことを目的としている。 今年度では、バリヤー放電の放電電圧を正確に設定するために高周波高圧電源を導入し、また、オシロスコープを導入し、バリヤー放電のエネルギーをリサージュ法により測定することによりオゾン発生の効率を求める手法を確立した。この手法により従来使用されてきた鉛ガラスおよびBC管ガラス(市販品)の放電効率を測定したところ、他の文献で報告されている23-25%となり、開発した手法が妥当なものであることが判った。 また、新規なガラス組成として研究しているアルカリ土類を含むホウケイ酸ガラスを用いオゾン発生の実験を行い、発生効率を測定したところ従来品より高効率の39%であり、オゾンの発生量も678ppmとなり、従来組成の1.3倍(鉛ガラス)1.5倍(高ケイ酸濃度ガラス BC管ガラス)の高いオゾン発生量を示した。 高いオゾン発生量と生成効率の要因を探求するためにガラス表面のラマン分光分析を行ったところ、ガラス材料の骨格である酸化ケイ素の構造とオゾンの発生に何らかの相関関係があることが示唆された。ガラス表面で 1)表面反応がオゾン発生に関与していること、2)表面に反応活性点(酸化ケイ素構造)が存在する可能性が示唆され、ガラス材料の探索に関して有力な知見が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、オゾン発生電極材料開発の基礎となるオゾン発生量のおよび発生効率の測定手法の確立をすることを計画していた。これに対して今年度の予算で目的の達成に必要となるバリヤー放電用の高周波高圧電源、オゾン発生効率を測定するためのオシロスコープを導入した。高周波高圧電源装置を用いてバリヤー放電の放電電圧を正確に設定でき、その際のオゾン発生量を測定できた。また、同じく今年度導入したオシロスコープによりバリヤー放電のエネルギーをリサージュ法により測定することができ、オゾン発生の効率を求める手法を確立した。 この手法により、従来使用されてきた鉛ガラスおよびBC管ガラス(市販品)の放電効率を測定したところ他の文献で報告されている23-25%となり、開発した手法が妥当なものであることが判った。さらに、新規ガラス材料として研究しているアルカリ土類を含む新組成のホウケイ酸ガラスを用いた電極では、従来品より高効率の39%であり、オゾン発生量も従来ガラスに比べ、約1.5倍であることも確認できた。これらは、今年度設定した計画したオゾン発生に関する研究目標をほぼ達成していると考えられる。 また、本研究計画では、従来の反応メカニズムではあまり考慮されていない表面反応が一つの要因であることを明らかにすることを第二の大きな目標としている。本年度は、ガラス表面のラマン分光測定によりガラスの酸化ケイ素の構造とオゾン発生に何らかの関連があることが示唆された。このことは来年度以後の反応メカニズム解明の研究に対して、有効なデーターとなる。 これらの成果は、提案時の研究計画を満足する結果であり、したがって、本研究はほぼ順調に進行していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、オゾン生成効率を正確に測定するための、高周波高圧電源、高性能オシロスコープの装置を導入してオゾン生成およびその効率を算出できる手法を確立することができ、研究計画はほぼ順調に進んでいる。従って、計画書どおりに研究を進行させる。具体的には、来年度は、オゾン発生効率に及ぼすガラス組成の研究を行う。 特に今年度のラマン分光測定の結果からガラス主成分である酸化ケイ素の構造とオゾン発生の関連が認められた。そこで、これをさらに発展させて、酸化ケイ素の構造がさらに明確に測定できる手法、装置(FT-IRやその他可能性のある装置を検討して購入・測定実験)を導入する。検討する材料は、酸化ケイ素構造の影響が明確に見られるように酸化ケイ素を各種改質した材料、酸化ケイ素以外の各種酸化物の適用による構造とオゾン発生の関連性を求める研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度では、オゾン発生効率の及ぼすガラス組成の研究を行う。特に今年度のラマン分光測定の結果からガラスの主成分である酸化ケイ素の構造とオゾン発生の関連が認められたので、これをさらに明確にして、材料開発の指針を得るための実験・解析のために、研究費を使用する。 装置としては、酸化ケイ素の構造がさらに明確に測定できる手法や装置(FT-IRやその他可能性のある装置を検討して購入・測定実験)を導入する。消耗品として、酸化ケイ素構造の影響が明確に見られるように酸化ケイ素を各種改質するための材料、オゾン発生用の電極に適用できそうな各種酸化物の薄板を購入し、これらを用いてオゾン発生特性を測定する。また、今年度の成果を報告・情報収集のために国内の学会に参加するための旅費も申請する。
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