研究課題/領域番号 |
23560884
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森田 英俊 佐世保工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (40332100)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レーザ加工 / 熱応力加工 / ガラス / 非接触加工 / 除去加工 / 脆性材料 |
研究概要 |
1,セナルモン法による加工中の歪分布観察 セナルモン法による歪検査器(現有設備)を用いて、歪分布観察用実験装置を製作した.次に高速度CCDカメラ(申請設備)にマイクロスコープレンズ(現有設備)を取付け,加工中におけるき裂先端付近の観察と歪分布について観察を行った.これらの実験は,レーザのガウス半径,出力,走査速度を変えて行った.結果,これまで溶融域が残る低速域のみの観察しかできていなかったが,溶融のない高速域における歪分布を確認できた.次に,この分布とFEMによる熱解析結果と比較を行ったが,熱収縮の影響を,現在この解析に反映できていないため,今後はガラスの熱収縮の温度依存性について基礎実験を行い,物性値を評価する必要がでてきた.しかし,この歪の観察結果から,最大圧縮応力場が発生した溝の最深部付近に存在し,これまでのFEMによる解析結果と加熱時においては,ほぼ同様の熱応力分布である事が確認された.2,トップフラット型プロファイルにおける溝加工実験 トップフラット型のレーザプロファイルで加工実験を行うために,トップフラットシェイパを購入し,実験装置を製作した.製作した実験におけるレーザプロファイルは,レーザプロファイラ(申請設備)にて測定を行った.レーザ出力15W~30W,走査速度は350mm/sから1000mm/sの範囲で実験を行い,高速域でトップフラット型のプロファイルに対応した断面形状の溝を発生させることに成功した.また,溝の表面形状についてレーザ顕微鏡(現有設備)で測定したところ,溝中心部の算術平均粗さRa=31.0nmであった.しかし,端部のごくわずかな範囲に剥離痕が確認された.これは,プロファイル端部の傾斜を大きくすることでこの剥離面は除去できるとこれまでの結果から推測できる.今回初めて,ガウス分布以外のプロファイルで溝加工ができる事を確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,高速度CCDカメラを購入し,これまで観察できなかった溶融域の無い加工条件(高速域)における歪を観察するための実験装置を製作し,加工中における歪分布の観察に成功した.溶融域がある低速条件における歪分布と,溶融域の無い高速域における歪分布を確認することができ,メカニズム解明のための指針を得た.また,FEM解析を行い,加熱時については同様な応力分布であることが確認された.しかし,き裂先端に関しては観察できなかったため,当初予定していたき裂を考慮した熱応力解析については満足な結果を出すことができなかった.そのため,次年度も引き続き継続して行う必要がある. ただし,次年度実施予定のトップフラット型レーザプロファイルにおける実験を前倒して行い,プロファイルに対応した断面形状の溝発生に成功したため,おおむね順調に進呈していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
1,き裂を考慮した熱弾塑性解析 ガラスの塑性(熱収縮)を考慮した解析を行い,前年度までに観察した歪分布と比較・検討を行い,発生メカニズムについて考察する.ただし,熱収縮の温度履歴を測定する新たな実験を計画し,より正確な解析ができるよう努める.2,熱収縮率の温度依存性測定 より正確な熱弾塑性解析を行うため,ガラスの熱収縮履歴を動画マイクロスコープ(申請設備)と赤外線サーモグラフィ(現有設備)を用いて測定を行う.この結果を熱解析に反映する.3,面取り加工実験 レーザプロファイルに対応した断面を製作できることを確認できたため,加工技術として最も実現の可能性が高いガラスの面取り加工実験を行い,加工技術としての可能性を検証する.そのための実験装置を製作し,技術的な課題について考察する.
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度購入した高速CCDカメラは,当該年度の予算範囲で購入したため,その解析ソフトとカラーカメラ部(オプション)を購入し,加工中の歪分布と,き裂先端のより詳細な解析を行う.特に,熱収縮履歴を詳細に測定するために,この解析ソフトが必要である. また,次年度購入予定であったトップフラットシェイパは,本校の研究費を利用して前倒し購入したため,歪分布観察をより詳細に行うため,高速度カメラの性能向上に予算を計上する予定である. また,前年度の残金である6850円は,少額であったため,次年度の予算と合わせて利用した方が効率的であると判断した.
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