研究課題/領域番号 |
23560884
|
研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
森田 英俊 佐世保工業高等専門学校, 機械工学科, 准教授 (40332100)
|
キーワード | レーザ加工 / 熱応力加工 / ガラス / 非接触加工 / 除去加工 / スライシング加工 / 脆性材料 |
研究概要 |
1,ガラスのスライシング加工実験 メカニズム解明のため,面取りの加工ではなく,0.7mm厚のガラス側面にCO2レーザを走査させ,スライシング加工に類似する実験を行った.レーザはフラットトップモードで行い,照射点半径0.3-0.4mm,出力は15-30W,速度は100-1000mm/sの範囲で実験を行った.これまで,モード形状に対応した加工断面が得られていたが,端部の形状がレーザプロファイル形状に対応しない問題が浮上した.このため,熱弾性解析を行ったところ,端部に圧縮応力場が現れることが明らかになった.そのため,端部に向かうき裂の進展が圧縮応力場に沿って起こったため,実験で得られたような断面となったと考えられる.これまでの溝加工をモデルとした熱弾性解析ではそのような圧縮応力場が現れることはなかった.これは,レーザの照射幅よりも狭いガラスを走査させたために,端部の拘束が緩い条件となったことが原因と考えられる.つまり,圧縮応力場発生の原因は,レーザによる加熱膨張のためと考えられるため,その端部に拘束を加える対策を施した.その後,レーザを走査させたところ,多少の改善が見られた.今後,拘束方法を工夫することでスライシング加工に近い加工が可能となると考えられる. 2,セナルモン法による歪の解析 熱弾性解析の結果と実際の歪の分布を観察し,比較することで解析結果の信頼性について検討を行った.解析は,動画マイクロスコープを用いて行った.分布の形状についてはおおむね一致を得たが,き裂を進展させる引張応力が現れる深さが,観察結果よりも深い位置に現れるため,今後はガラスの物性値の温度依存性に関する取扱いについて検討する必要があると考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
自由端の場合と拘束を加えた固定端の場合のき裂の進展の変化について検証を行った.特に,熱弾性解析と実験を行い,その二つの結果を比較したところ,自由端の場合に発生する圧縮応力場の存在とそのために引き起こされる形状不良の関係性が確認された.また,その改善策として端部を拘束したところ,改善される傾向が見られた.この結果は熱弾性解析で示された圧縮応力場の領域の減少によるものだと考えられる. また,セナルモン法による実験中の歪の解析も行い,熱弾性解析と概ね一致を得たが,き裂を進展させる引張応力が現れる深さが,観察結果よりも深い位置に現れるため,今後はガラスの物性値の温度依存性に関する取扱いについて検討する必要があると考えられる. 上述の通り,解析結果について検討余地があるが,メカニズム解明に近づいているためおおむね順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
1,最適な拘束方法の検討 拘束を加えることで,断面形状の改善は見られたものの,スライシング加工としては,充分なものとはいいがたい.そのため,圧縮応力場をより効率よく打ち消す最適なガラス端部の拘束方法について検討を行う.これまでは面による拘束を行っていたが,集中荷重をかける方法で実験を行う.また,解析においても最適な荷重の位置の推定も行い,実験と比較検討する. 2,応力拡大係数の算出とメカニズム解明 これまでの解析では応力場の解析のみで,最大引張応力が現れる深さの場においてき裂の進展が起こっていると仮定していたが,実験における深さ位置と大きな違いがある.そのため,応力拡大係数による検討を行い,実際にき裂の進展が起こる深さの同定を行う.このことから,破壊力学的にメカニズム解明に繋げたいと考えている.
|
次年度の研究費の使用計画 |
1,実験において,薄板のガラスを複数重ねた状態で実験を行い,熱弾性解析から求めた応力拡大係数から求めたき裂進展の幅との比較を行う.そのため,t0.21~0.7mmの薄型ガラスを購入する予定である. 2,ガラスの拘束方法を検討するための実験装置の製作を行う.拘束力の検討も行えるようにするため,マイクロメータ等を改良して製作する予定であり,これらの製作費に利用する予定である. 3,集光レンズ,ミラー等の光学系部品の購入に利用する予定である.加工用の比較的高出力のレーザであるため,これまでの実験で多少の損傷があるため,これらの購入に充てる予定である.
|