本研究では,この現象の発生メカニズムの解明とこの現象を利用した平面研削やスライシング加工に相当する新しい除去加工技術の開発を目的に研究を行った.今回は,単位厚さあたりの応力拡大係数を用いて,メカニズムの考察をするため,スライシング加工実験を行い,熱応力によって水平き裂が誘導されている事の立証とその進展の様子について検証を行う.また,実用的な加工法としての評価も行った. ①スライシング加工実験を行った.鏡面溝発生現象のメカニズム解明にあたり,今回は,簡易化のため単位厚さあたりでき裂進展を考えることとした.そこで,t0.7mmのガラスを立てて厚さ部分にに対してレーザを走査させるスライシング加工実験を行った.溝形成を考える場合には,溝の側面と底面のき裂誘導を考える必要があるが,スライシング加工の場合には,溝形成における底面のき裂の誘導のみを考えれば良い. ②熱応力解析から応力拡大係数の導出を行った.前述の実験における解析モデルに対して,熱応力解析を行った.解析のビーム直径は0.74mm,熱源の種類はフラットトップモードとし,走査速度は10mm/s~1000mm/sで解析した.その結果をもとに,応力拡大係数の算出を行った.ガラスの破壊靭性値と比較し,き裂が進展する深さ,先端位置について考察し,概ね実験と一致を得た.ただし,先端位置については,実験では観察できなかったため,今後証明する手段を検討する必要がある. ③加工面の再評価を行った.レーザ顕微鏡が導入されたため,速度条件ごとの断面形状の変化,表面粗さの変化について考察し,レーザビーム直径(フラットトップモード)0.74mm,出力30Wにおける最適な条件を示すことが出来た.
|