研究概要 |
39 Kの高い臨界温度を示すMgB2超伝導体は、結晶粒間の弱結合性が無い等、超伝導機器への応用に有用な特性を持ち、マグネット用線材として実用化が期待されている。しかし従来報告されているMgB2線材の臨界電流は、未だ実用には不十分なレベルにある。本研究は、MgB2超伝導体の上部臨界磁界の異方性が、臨界電流の制限因子であることに着目し、ex situパウダー・イン・チューブ法によって作製したテープ線材の臨界電流の異方的な磁界依存性を増大させることにより、高磁界における臨界電流特性の改善を図ることを目的とする。そのため、より硬いシース材を使用すること、また、芯に充填する粉末として磁場中電気泳動法等によって作製した集合組織を持つ粉末を使用する。さらに、線材の集合組織と臨界電流の相関を評価し、マグネット用線材としての使用に資するデータを収集することを行なう。 平成23年度では、ex situパウダー・イン・チューブ法と、比較のためにin situパウダー・イン・チューブ法によるテープ材を作製した。ここではシース材として従来使用されている純鉄を用い、また、ex situ法の原料粉末としては市販の原料粉末を使用し、in situ法の原料粉末にはSiCは添加しなかった。これらの異なる作製法によるテープ材の4.2 Kにおける臨界電流について、テープ材の表面と磁界の印加方向が平行な場合と垂直な場合の磁界依存性を調べた。Ex situ法線材では、テープ面と磁界が垂直な場合の臨界電流は、平行な場合に比べて、高磁界においてより急速に減少した。平行な場合の臨界電流値の垂直な場合の値の比は、5, 6, 7 Tにおいてそれぞれ3, 7, 14であった。一方、in situ法線材では、テープ面と磁界が垂直な場合と平行な場合との間において臨界電流の磁界依存性に、ほとんど差は見られなかった。
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