研究課題/領域番号 |
23560885
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
黒田 恒生 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, フレッシュキャリア (70354305)
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キーワード | MgB2超伝導テープ材 / Ex situ法パウダー・イン・チューブ法 / 臨界電流 / 集合組織 |
研究概要 |
平成24年度では、前年度に続き、ex situパウダー・イン・チューブ法によりテープ材を作製し、その超伝導特性と微細組織との相関を調べた。前年度では、シース材として低炭素鋼であるS45Cを使用したテープ材に関し、純鉄を使用したテープ材の臨界電流特性に比較して、同等か低い特性のテープ材しか作製できなかった。本年度では、シース材にMgB2粉末を充填する前に、シース材を予備熱処理する条件とその後の複合加工性との関連を詳細に調べ、650度Cで1時間熱処理を施すと、その後の圧延加工の途中で中間焼鈍を施さず、さらにテープ材に割れを生じることなく、所定の厚さまで圧延加工ができることを見出した。その結果、純鉄よりも高い機械的強度を持つS45C炭素鋼の特性を生かしたテープ材を作製することができた。テープ面に平行に磁界を印加した場合の臨界電流密度は、純鉄シースの場合、10Tで10^3 A/cm^2であるのに対しS45C炭素鋼シースの場合、12Tの高磁界で10^3 A/cm^2を示した。さらに、X線回折法によりMgB2芯部の集合組織を調べると、テープ表面に平行なMgB2結晶のab面のX線回折ピーク強度が、無秩序に結晶が配向していると見なされる場合の強度に比較し、純鉄シースよりも炭素鋼シースの場合の比が大きくなっていた。この結果は、炭素鋼シースを使用すると純鉄シースの場合よりも集合組織がより発達することを示しており、臨界電流密度の磁界依存性の結果と整合性のある結果であった。 本年度では、集合組織を持つMgB2粉末の作製のために、磁界中スリップキャスト法を試みる実験も行った。原料粉末として市販のMgB2粉末をエタノール中に分散させてサスペンションを作製し、12Tの磁界中でスリップキャストさせてMgB2バルク体を作製した。現在、本バルク体の配向組織をX線回折法により解析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
低炭素鋼S45Cをシース材としてテープ材を作製する研究に関し、純鉄をシース材として使用する場合よりも高い臨界電流密度を示すテープ材の作製条件を見出すのに初期の計画よりも長い時間を費やす結果になった。単にテープ材を作製するだけであればS45C管の焼鈍温度を高くするか、加工中の中間焼鈍の回数を多くすればよい。しかし、この場合、シース材の硬さが軟らかくなり過ぎ、MgB2粉末芯部に大きなせん断力を負荷することができず、MgB2芯部に集合組織を発達させることができなくなった。その結果、純鉄をシース材として使用する場合よりも、臨界電流特性は、悪くなった。また、逆にS45C管の焼鈍が不足すると、加工の途中でS45C管に割れが発生し、所定のテープ厚さまで加工するまでにテープが破損する結果になった。このような理由で、S45C管のテープ材の作製条件の最適条件を見出すのに時間を要してしまい、次の研究課題である、集合組織を持つ粉末の作製実験に取り掛かるのが遅れる結果になった。
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今後の研究の推進方策 |
純鉄及び低炭素鋼をシース材として使用するテープ材の作製では、これまで市販のMgB2粉末を使用してきたが、今年度では、純MgB2粉末よりも高い臨界電流特性が得られることが報告されている炭素置換したMgB2粉末を使用して、テープ材を作製し、テープ材の超伝導特性と微細組織との相関を調べる予定である。 また、磁界中スリップキャスト法を利用する粉末の作製研究では、できる限り高い配向度を持つ粉末を作製するために、原料粉末の粒度、サスペンションを作製する分散媒等の作製条件を調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
初期の計画どおり、使用する予定である。
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