申請書の「研究目的」に記載した3項目に照らし、記述する。 1「.傷形状の直接復元アルゴリズムの探求」においては、空間2次元のラプラス方程式の解の解析的表現を得られる、古典的な特異積分方程式に基づく解法を海外研究者と探求した。電位差法のポテンシャル問題を対象として、空間2次元の表面に垂直亀裂を有する場合と内部に亀裂がある場合、それぞれの解の陽的表現を得る事が出来た。これら解析解が得られる事によって、非常に単純となることを一部の問題に対して示す事ができた。また亀裂先端にとびのある特殊な境界条件のある問題の理論を検討し、これまでに複雑な条件の下で存在が保証された報告に代えて、大幅に簡略化できた境界積分表現を得るとともに、解の可解性を証明した。加えて最終年度には、境界要素法に基づく3次元解析のコンピュータプログラムを製作した。 2.「復元アルゴリズム先導プローブ開発」においては、高周波電源を用いて一様磁場を印加する渦電流探傷用磁束印加機構と3次元磁気センサを用いた磁気計測プローブおよび周辺回路を設計し製作した。このプローブで、表面に単一傷を有する鋼材平板を磁化し、その漏洩磁束を表面近傍で計測したところ、傷に平行方向、垂直報告そして表面方鉛直方向の2次元平面場のそれぞれにおいて、特徴的な結果を示すことが判明した。この結果は3次元磁場計測データの逆解析における基礎的知見になると考えられる。 3.「漏洩磁束法における展開」製作したプローブシステムは前述の通り漏洩磁束法および渦電流探傷法の双方の検査に利用可能であることが示された。これにより半導体磁気センサを用いることによるプローブの共用可能性を示した。 総合的に、直接法の数理解析が当初計画以上に進展した一方、一様磁場印加システムの逆解析の進展が遅れたが、これまで構築した設備と環境を生かして終了年度後も引き続き研究を継続する予定である。
|