自動車のエンジンや自動車用重要保安部品に使用される鋳鉄材料は、高強度が要求されるため、高強度化処理剤にレアアース(RE)が一般に使用されている。REの生産量は中国に集中しており、REの価格は上昇し、入手も困難になってきている。現在、REの輸出は正常化に向かっているが、まだREの安定供給問題は解決に至っていない。 球状黒鉛鋳鉄の高強度化には黒鉛粒数の増加が不可欠でありREの添加が有効である。そこで本研究では、球状黒鉛鋳鉄の製造におけるRE代替・削減策の一環として、球状黒鉛鋳鉄の黒鉛粒数に及ぼす微量REとアルカリ土類金属を利用した処理剤の開発について検討した。これにより、自動車のエンジンや重要保安部品に使用される鋳鉄の、重い・脆いというイメージを一新する「高強度鋳鉄材料」の開発を目的とした。 平成23年度は、球状黒鉛鋳鉄の機械的性質と黒鉛粒数に及ぼすセリウム(Ce)、ランタン(La)の影響について研究を行い、CeとLaを単体でRE源とした試料の方が、CeとLaを混ぜてRE源としたものより黒鉛粒数が多くなることを確認した。 平成24年度は、球状黒鉛鋳鉄の黒鉛粒数に及ぼす微量REとアルカリ土類金属併用添加について検討した。微量添加であるRE0.02%にカルシウム(Ca)を複合添加することで黒鉛粒数が増加することが確認出来た。 平成25年度は、La単体添加した試料で添加量が0.01~0.02%で黒鉛粒数が最大となることが確認でき、さらにCaを複合添加することにより従来の処理剤よりも黒鉛粒数が増加できた。La0.01%とCa0.025%を複合添加した試料において、引張強さ460MPa、伸び率25%の良好な機械的性質が得られた。黒鉛粒数増加には、溶湯中のS量に対し適切な量のREを単独添加することが重要で、本研究の結果より、従来の処理剤に比較し約4分の1の量までREを低減できた。
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