研究概要 |
銅電解精製では生産性の向上のために高電流密度化が求められているが、実操業には適用されていない。その主因は、効果的な撹拌の方法と撹拌を利用した場合の最適な条件が明確でないことにあると考えられる。電解には多くの因子が相互に影響しており、またスケールアップに対応できることを考慮すると、物質移動が明確な条件で系統的なデーターを取得することが有効と考えられる。 今年度は、RDE(回転ディスク電極)装置を用いて、不純物の有無の条件において、強制対流が分極特性および析出形態に与える影響を調査した。特に、これまで平滑化に及ぼす影響が顕著であった 100 rpm 以下(0, 30, 50, 70, 100rpm) における電析挙動を詳細に調査した。電解時間は電気量が 2.0 MC/m2 となるように定めた。不純物としては、As濃度 3g/L、Bi濃度 0.2g/L、Sb濃度 0.5g/Lとした。 400A/m2 の場合には、いずれの回転数および不純物に依らず、平滑な析出物が得られた。1200 A/m2 の場合、不純物を添加しないときには、0, 30, 50, 70rpm と回転数を上げるほど平滑性が向上し、70 rpm と 100rpm では同程度に平滑であった。 不純物を添加すると、0rpmのときには、穴や突起が観察されるようになり、30rpm では不純物無しと比較して平滑性が著しく低下した。50rpm 以上では不純物無しと同程度の平滑性が得られた。すなわち、不純物によって平滑性が低下するが、物質移動を促進させることで不純物の影響を抑制できることが明らかになった。また、不純物無しで平滑性が得られる物質移動条件とほぼ一致しており、電極表面での銅イオン濃度の低下による電位の低下に対応していることが明確となった。
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