研究課題/領域番号 |
23560895
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
上谷 保裕 富山県立大学, 工学部, 准教授 (60099405)
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キーワード | 半凝固連続鋳造 / 7075アルミ合金 / 過共晶Al-Si-Cu-Mg合金 |
研究概要 |
前年度末に製作したインバータ方式による回転速度制御を行う3.7kWモータの半凝固スラリー製造装置を用いて,過共晶Al-Si合金では,前年度までに固相の粒状化と初晶Siの微細化が可能となったSi含有量が15%程度の合金を,さらにSi含有量を21%に増やしたAl-21%Si-4.3%Cu-1.0%Mg合金を対象素材として種々の条件で約500gの半凝固スラリー製造を試みた.その結果,外接円径200mmで厚さが20mmの純銅製円形ロータと外接円の1.5/8倍の円弧長さのチルブロックを用いて,溶湯温度が640℃,ロータ回転速度150rpm及び,ロータとチルブロックの隙間7mmの条件で,凝固した半凝固スラリーの下部底面から5mm程度の厚さ部分を除いて,粒状化の程度には少し差異が見られるが,固相が平均径で40±16μmで粒状化するとともに,初晶Siは平均径で16±10μmと微細で均一分散しており,Si含有量が相当高い過共晶A-Si系合金においても目的とする半凝固スラリーが製造可能となった. 当初の計画では同上合金で,5kg以上の連続製造,引き続き,連続鋳造を試みる予定であったが,ロータがこれまでの正八角形ではなく,円形で良好な結果が得られた理由により,7075合金でもロータ形状の影響を先に明らかにして,前年度達成できなかった平均径で50μm以下の半凝固スラリー製造を確立しようとした.その結果,7075合金については,ロータ材質を純銅製から熱伝導度の低いSUS304に変えたところ,7075合金では過共晶A-Si系合金とは異なり,従来どおり,正八角形ロータと外接円の1/8倍の円弧長さのチルブロックを用いて,固相率が低くて半凝固連続中に適していて,凝固組織も粒状化して,平均径で49±16μmと微細で均一度が高い半凝固スラリーが製造可能となった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
溶湯量が500gの7075とSi含有量が20%以上とかなり高い過共晶Al-Si系合金の両方において,目的とする半凝固スラリーが製造可能となったが,連続鋳造に必要な5kg以上の連続製造条件がまだ確定できていないことが,達成度が少し遅れていることの理由である.
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今後の研究の推進方策 |
当初計画の過共晶Al-Si系合金の半凝固連続鋳造を,7075合金の50μm程度に微細化を優先して入れ替えてこれを達成した,従って,これらの合金の5kg以上の半凝固スラリーの連続製造条件をできるだけ早く,6月中を目途に見出すように実験中であり,その後は,この条件を基に,同時並行で7075合金と20%程度のSiを含有する過共晶Al-Si系合金において,6kg程度の溶湯で直径50mmビレットの半凝固連続鋳造実験を行い,最終目標である表面及び内部の健全性が高いビレットの半凝固連続鋳造技術の確立を目指す,
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次年度の研究費の使用計画 |
繰り越された約19万円と次年分を合わせた69万円の大部分は,過共晶Al-Si合金と7075合金の半凝固スラリーの連続製造と,引き続いての半凝固連続鋳造に必要な溶解るつぼ,断熱材,連続鋳造用黒鉛鋳型,交換用ロータ及び円弧形状チルブロックの製作などの物品や消耗品の購入に充てる.
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