高濃度アルミ合金の連続鋳造においてしばしば問題となっている鋳造割れを防止するために,本研究では,7075高強度アルミ合金と過共晶Al-20.5%Si-5.5%Cu-1.3%Mg合金を素材として,半凝固スラリーによる半凝固連続鋳造法を開発しようとした.この場合,半凝固スラリーの連続安定製造が本研究の要であり,先に開発したロータ回転方式により,平成24年度中までに,いずれの合金ともに450g程度と少量ではあるが,過共晶合金では,直径200mmの純銅製円形ロータと外接円の1.5/8倍の円弧長さのチルブロックを用いて,固相が平均径で0.037mmで粒状化するとともに,初晶Siは平均径で0.014mmと微細で均一分散した目的とする半凝固スラリーが製造可能となった.また,高強度合金については,ロータ材質をSUS304製に変更して,正八角形ロータと外接円の1/8倍の円弧長さのチルブロックを用いて,固相が平均径で0.049mmと微細で均一度が高い半凝固スラリーが製造可能となった.予定よりも4,5ヶ月遅れたため,平成25年度は,過共晶合金に限定して,半凝固連続鋳造に必要な前年度までよりも大量の4kg程度の半凝固スラリーの製造と,表面状態が割れの無い健全で内部組織も半凝固スラリーと同様の微細均一な細棒の半凝固連続鋳造を目指した.しかし,溶湯のロータへの導入管内での凝固やロータ/チルブロック間隙における溶湯の急速凝固などの想定外のトラブルが続発して,この問題の解決に多大の時間を要した.試行錯誤の結果,ロータ厚さ(幅)を従来の20mmから80mmに拡大することで,過共晶合金で半凝固鋳造に必要な約3.8kgの半凝固スラリー製造が可能になった.今後は,鋳造割れや表面の深いしわ発生などの問題が深刻な過共晶合金で,半凝固連続鋳造実験に取り組む予定である.
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