平成25年度は,まず,数値解析プログラムの改良を行った.具体的には,前年度に導入したFAVOR法では,体積率の小さい計算メッシュで不安定性が高く,計算が破綻することが多かったので,メッシュの体積率に適当な閾値を設け,それ以下の体積率のメッシュは固体境界として扱うこととした.さらに,気液界面付近の計算法に微修正を加え,安定性の向上を図った後,流動長実験を模擬した数値計算の実行へと進めた. 当初の計画では,溶湯の物性値や金型表面の熱抵抗を表すパラメータを数値計算で考慮し,実験結果に最も良く一致する単一のパラメータの組を探索する予定であったが,昨年度までの検討結果より,実験結果と計算結果を完全に合致させるためには,パラメータを定数とすることは困難と判断した.また,流動長に最も強く影響するのは,金型表面の熱抵抗であったので,このパラメータに着目し,溶湯の粘性に関するパラメータを固定して計算を進める方針とした.そして,計算により得られた流動長を各種パラメータの関数として整理し,実験による流動長の経験式と比較することにより,金型表面の熱抵抗の最適値を,流速条件と温度条件の関数として求める方法を見出した.その結果,アルミニウム合金ADC12の真空吸引試験結果と数値解析結果を一致させるためには熱抵抗値を0~8.4μKm^2/Wで変化させる必要があり,マグネシウム合金AZ91Dの流動長については熱抵抗値を4.3~7.5μKm^2/W変化させる必要があることが分かった.なお,厳密な精度が必要でなければ,アルミニウム合金ADC12については平均値である3.3μKm^2/Wを,マグネシウム合金AZ91Dについては平均値である5.8μKm^2/Wを用いても良いことが分かった.
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