研究課題/領域番号 |
23560899
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研究機関 | 独立行政法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
鳥塚 史郎 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (60354271)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | SUS304 / 結晶粒超微細化 / 非磁性 / 高降伏点 / 温間加工 |
研究概要 |
準安定オーステナイトであるSUS304鋼は降伏点が低いことがしばしば問題とされる。この降伏点を高くする簡単な方法は冷間加工である。冷間加工によって強度は約2倍以上になる。しかし、冷間加工を加えた場合、加工誘起マルテンサイト変態が生じ、磁性を持つようになってしまう。これは、マルテンサイトは強磁性体のフェライトであり、磁性を有するからである。一方、オーステナイトがより安定な方向である温間加工は、加工誘起マルテンサイトの生成を抑制する可能性がある。同時に、温間加工域における強加工によって、結晶粒の微細化が可能であり、非磁性を維持したまま、高降伏点を実現できる可能性がある。本研究では、温間加工および結晶粒超微細化によって、SUS304鋼で非磁性・高降伏点ステンレス線の開発可能性を検討した。市販のSUS304線材(φ6mm)素材の温間引張試験を行ったところ、引張強さ、伸びは、室温が最も大きく、温度の上昇とともに強度、伸びともに低下した。特に室温から100℃引張変化が大きい。この強度・伸びの低下は加工誘起マルテンサイト変態と密接に関係していると考えられ、200℃以上では、変形中に加工誘起変態は生じなくなると思われる。溝ロール圧延で得られた材料の応力-ひずみ曲線から、すべての圧延条件で、材料の降伏点(0.2%耐力)は900MPa以上が得られている。温間加工が降伏点上昇に効果的であることが明らかである。どの応力-ひずみ曲線も加工硬化は見られない。SQUIDの測定結果から得られた透磁率であるが、室温で溝ロール圧延を行った材料の透磁率は5を超えており、強い磁性を有していたのに対し、500℃で圧延を行った材料の透磁率は1.015であり、ほほ非磁性といえた。また、結晶組織も極めて微細であった。以上のことより、温間強加工によって、非磁性・高降伏点SUS304オーステナイト線材開発の可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
温間加工が非磁性、高降伏点化に有効であることが明らかにできたため、初年度としては、目標通りに結果を出すことができた。(1)温間引張および円柱圧縮試験による加工誘起変態発生挙動の把握温間引っ張り試験の結果、200℃以上では、変形中に加工誘起変態は生じなくなることを明らかにできた。(2)平面ひずみ圧縮試験による結晶粒微細化の定式化 着手せず。(3)温間連続圧延での組織微細化溝ロール圧延で得られた材料は、結晶粒径密度の上昇が確認でき、材料の降伏点(0.2%耐力)は900MPa以上が得られた。温間加工が降伏点上昇に効果的であることが明らかにできた。室温で溝ロール圧延を行った材料の透磁率は5を超えており、強い磁性を有していたのに対し、500℃で圧延を行った材料の透磁率は1.015であり、ほほ非磁性といえた。また、結晶組織も極めて微細であった。以上のことより、温間強加工によって、非磁性・高降伏点SUS304オーステナイト線材開発の可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
(1)温間連続圧延での組織微細化温間加工が、結晶粒を微細化しつつ、非磁性・高降伏点化することを明らかにできたが、結晶組織の定量的評価、力学的特性との関係を明らかにしてゆく。その上で、長尺線の製造に取りかかったゆく。温間オーバル・スクエア多方向圧延技術をステンレス線材に適用し、組織変化、降伏点変化を研究する。(2)温間伸線技術の開発温間連続圧延での最小径は約3mmなので、1mmまで直径を減少させるのに、伸線が必要であるが、温間で伸線を行い、その組織・強度変化を調べる。同時に、加工誘起マルテンサイト変態が生じるかを調べる。方法としては、EBSDおよびSQUIDを用いて、組織およびB-Hカーブの観点から調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
温間連続圧延実験および温間伸線技術の開発のために、以下の研究費を用いる。伸線装置改造 1,500千円研究補助員費 700千円消耗品 素材 圧延ロール 伸線ダイス 600千円
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