新規塗装技術の開発において重要となる低分子量ポリマー+CO2系の粘度の把握を目的とした.そこで分子量の異なるPolybutadiene(PBD)を用い粘度の測定を行うことで,粘度およびCO2の可塑化効果に対する分子量の影響を検討した.また,塗料として利用されるポリウレタンの原料となるPoly(hexamethylene diisocyanate)(PHDI)を用い,PBDとの比較を行った.さらに,粘度推算において有用性が報告されているFree volume theory(FVT)による粘度推算の適用性について検討を行った. 実験では,低分子量ポリマー+CO2系粘度,CO2溶解度,CO2溶解に伴う膨潤度を測定した.得られた結果を基に,高圧二酸化炭素存在下における低分子量ポリマーの粘性挙動について,温度・圧力,ポリマー種,分子量の影響を考察した.PBD,PHDIのいずれにおいても圧力増加に伴うCO2溶解量の増加に伴い粘度が低下することが確認できた.また,粘度低下の割合を表すシフトファクターの比較から,低温ほど粘度低下が大きいことが分かった.これは低温ほどCO2 溶解度が大きく,ポリマーの密度が高いため自由体積が小さいことが影響したと考える.また,無極性のPBDに比べ極性を持つPHDIの方がCO2溶解度が大きく,CO2による可塑化効果も大きいことがわかった.さらに,分子量の大きいポリマーほどCO2の可塑化効果が大きかった. 推算においては,PBD系は平均偏差(AAD)が1.3~7.7%と良好に推算できた.PHDI 系についてはAAD=6.1~43.5%と大きいが,CO2による2桁にわたる大幅な粘度低下を表現することができた.以上より,FVTが複数のポリマー系に適用可能であることが示され,本推算モデルは高圧二酸化炭素存在下における低分子量ポリマーの粘性挙動を非常によく再現できた.
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