最終年度は過去2年間で開発した粒子分散液流れシミュレータを用いて,精密ろ過におけるファウリング・メカニズムの解明に取り組んだ.まずデッドエンド精密ろ過に対して,前年度に引き続き,膜細孔径と開孔比を変えたシミュレーションと実験をおこなった.その結果,ファウリングがろ過膜の供給液側で発生する条件と,透過液側で発生する条件が定量的に明らかになり,膜細孔径と開孔比を軸に取ったファウリング形態の相図を作成することができた. さらにデッドエンド精密ろ過に対して,複雑細孔膜を模擬した屈曲細孔膜のファウリング・シミュレーションをおこなった.ここで粒子分散液中の電解質濃度の影響を調べた結果,粒子間の静電相互作用がファウリング形態に影響を及ぼすため,電解質濃度によって粒子阻止率が変化することが認められた. 次にクロスフロー精密ろ過に対して,膜細孔径による透過流束の時間変化を調べるシミュレーションをおこなった.その結果,膜細孔径が粒子径に対して十分大きい場合はファウリングがろ過膜の透過液側でも発生するとともに,ファウリングの定常状態では,より小さな膜細孔径の場合に比べて透過流束が小さくなることがわかった. 3年間の研究を通して様々な条件で粒子分散液の膜ろ過シミュレーションをおこない,従来の実験的研究およびシミュレーション研究では解明されていなかった定量的なファウリング・メカニズムが明らかになった.それにより,膜細孔径や開孔比,電解質濃度など,多様なプロセス条件による精密ろ過プロセスの性能推算が可能になった.
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