研究概要 |
超臨界二酸化炭素を用いたポリマー染着プロセス技術の開発に必要となる,超臨界二酸化炭素に対する染料,抗菌性,難燃性,電磁遮蔽性を有する機能性物質の溶解現象および超臨界二酸化炭素雰囲気下でのポリマーの物性値変化のメカニズムを解明するため,超臨界二酸化炭素中での機能性物質の溶解度,ポリマーのガラス転移温度を調べた.平成23年度には超臨界二酸化炭素中での分散染料の溶解度を,種々の条件で高精度の測定できるように流通式の装置を改良した.機能性物質にはアントラキノンを骨格とし,これに発色団として様々なグループ(OH,NH2,Cl,CH3)が付加した三原色分散染料のC.I.Disperse Blue, Red, Yellowを用いて,単独成分および混合染料の測定を系統的に行った.その結果,温度範囲(80-110℃)、圧力範囲(10-25MPa)において,混合染料の溶解度の温度・圧力依存性を明らかにした.さらに,状態方程式を用いた熱力学的手法により,実験条件範囲内で溶解度データを定量的に表わすことに成功しており,超臨界染色プロセス設計のための基礎物性データを得ることができたと判断できる.さらに,超臨界二酸化炭素雰囲気下におけるポリマーの可塑化効果を明らかにするため,高圧下でのポリマーのガラス転移温度を測定可能なIGC法(Inverse Gas Chromatography)に基づく測定装置を製作し,圧力(0.1MPa,8-15MPa)の変化に対するポリアクリル酸(分子量5000)のガラス転移温度を測定した.そして,15MPa下におけるポリアクリル酸のガラス転移温度は,0.1MPaにおける値に比べて,約80%降下することを明らかにした.このことは圧力を加えることにより,より低温下でポリマーが可塑化可能であることを示しており、ポリマー成形加工における新たな工学的知見を与えるものである.
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