作製したPd複合膜の多孔質Ni支持体の微細構造は、インク径170μm、インク間距離30μmのフォトマスクを用いたとき、開孔径160μm、開孔間距離40μmとなり、他のフォトマスクを用いたときも同様にフォトマスクの設計値と実際の多孔質Ni支持体の微細構造には5-10 μm程度の相違が生じた。これは厚みのある基板(3 mm)に露光したため、光源とフォトマスクの密着度が不十分となり、光の広がりが生じたためと考えた。作製したPd複合膜の支持体の開孔率は50.3%と目標値としていた50%を超えており、350℃にて水素透過試験を実施した結果、開口率を考慮して求めた水素透過係数は試験圧力に依存せずほぼ一定値となり、文献値とほぼ一致した。しかし、400、450℃では、圧力上昇に伴い水素透過係数が上昇し、Pd複合膜に欠陥が生じたことがわかった。Pd複合膜の表面観察結果から、多孔質Ni支持体の開孔間より破壊が起きていることが確認できた。そこでPd複合膜の断面をSEM-EDXにて観察したところ、いずれもPdと多孔質支持体層Niの合金化が確認された。PdとNiの拡散防止層のAu層が厚いほど合金化速度を低下できるが、水素雰囲気下でPdとNiの合金化が生じるとPd複合膜が破壊されることがわかった。そこで、Auよりも高融点であり合金化の抑制効果が期待できるRhを拡散抑止層として用いてPd複合膜の作製し、水素透過試験(450℃)を実施した。Rhを用いたPd複合膜では24 h後でも水素透過係数は文献値と一致し、破壊が生じないことがわかった。また試験後のSEM・EDXにて観察結果からも合金化が進行していないことがわかった。以上の結果からPdと多孔質支持層Niが合金化し、Ni層内部に水素が多量に吸蔵されとことでPd複合膜の破壊に至ったと考えられ、実用化には高価なRhにかわる拡散防止層が必要と言える。
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