研究課題/領域番号 |
23560908
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
今村 維克 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (70294436)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 糖類アモルファスマトリクス / 凍結乾燥 / 水分収着 / 水和状態 / 非単一性 |
研究概要 |
糖によって形成された非晶質固体(アモルファスマトリクス)は食品・医薬品において不可欠な素材である.本研究では,種々の糖類アモルファス試料について,個々の状態にある収着水の量を解析し,各試料の物理化学的特性と突き合わせることで,個々の収着状態にある水の物理化学的特性に対する寄与(機能)を明らかにすることを目的としている.本年度は,約20種類の糖類を用いてアモルファス試料を作成し,それらの水分収着特性(水分収着等温線)とガラス転移温度(Tg),および収着状態を解析した.アモルファス試料は凍結乾燥により作成し,絶乾後,蒸気圧を調整した減圧デシケータ内で平衡状態になるまで調湿した.また,凍結乾燥試料の一部には,高圧処理(7~700 MPa,0~30分間)を施した上で調湿した.また,調湿試料のIRスペクトルを測定し,1650 cm-1近傍に現れる収着水の面内変角振動に起因するIR吸収ピークをFourier self-deconvolution処理することにより,個々の収着状態に対応するcomponent bandにピーク分離した.調湿および絶乾試料のTgは示差走査熱量計により測定した.以上の実験の結果,糖の種類や試料の調製方法・条件によらず,5つの収着状態(i~v)が存在することが分かった.また,高圧処理した試料を一定蒸気圧下で調湿すると,Tgは非圧縮試料と一致するが,特定の収着状態((i), (ii))の水分量が顕著に低くなることが分かった.さらに,調湿によるTgの低下量をcomponent band (iii~v)のエリアに対してプロットすると,糖の種類によらず,一本の直線関係を示すことが分かった.これらより,収着状態の内,iおよびiiの収着状態はアモルファス固体の可塑化(Tgの低下)に関与しておらず,iii~vの状態の収着水が可塑化作用を担っているものと考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
再現性・効率とも良好に実験データが蓄積されつつある.測定装置や実験設備の故障等の大きな遂行上の問題も生じなかった.
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き,糖類アモルファスマトリクスの収着状態と物理化学的諸特性との関係を調査していくが,収着状態の操作により積極的に物理化学的特性を操作する方策についても検討を行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行する上で,試料調製用に種々の糖や塩類が不可欠である.また,IRスペクトル測定および熱分析には,それぞれKBr粉末とアルミ製サンプルパンを著量使用し,さらにいずれの測定においても大量の窒素ガスを要する.これらの消耗品購入と学会・論文発表経費として研究費を計上している.
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