研究課題/領域番号 |
23560910
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
福井 国博 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60284163)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 乾式サイクロン / 分級径 / 分級精度 / 焼結金属 / 液体サイクロン |
研究概要 |
サイクロンは集塵機や分級機として広く用いられているが、吸引エアロゾル流の流量を変化させることができなかった。そこで本申請研究では、新たにコニカル部に多孔質材料を持つ分離径制御流同伴型サイクロンを開発し、少量の制御流をコニカル部から導入することでオンタイムに分離径を自在に変更することを可能とし、従来のサイクロンよりも分離径を微小化することを第1の研究目的としている。また、このサイクロンとマイクロ波加熱を併用し、PM0.1~PM2.5 の粒子状物質とVOCを同時に除去する乾式システムを構築すると共に、主流を液体、分離径制御流を気体として、粒子合成と分級・捕集を同時に行う湿式機能性粒子製造プロセスを構築することを第2の研究目的としている。本年度は、コニカル部にポア径2μmの焼結金属を有する分離径制御流同伴型サイクロンを試作し、焼結金属からクリーンエアを供給する効果を検討・評価した。その結果、乾式サイクロンでは、クリーンエアを供給することで粒子付着を低減できることが明らかとなった。また、クリーンエアの供給量により分級径を制御でき、適切な供給量を選択することで従来よりも微細な分級径を得ることが可能であることも明らかとなった。これに加え、液体サイクロンとして使用した場合においては、乾式サイクロンよりも顕著に分級径の可変範囲が拡大することがわかった。また、同様に、適切な供給量を選択することで従来よりも微細な分級径を得ることが可能であり、その適切な供給量は乾式サイクロンよりも大きいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本申請を行った際の研究計画では、平成23年度に「PM0.1~PM2.5分離回収可能な分離径制御流同伴型サイクロンの開発と性能評価」「PM0.1~PM2.5,VOC同時除去装置の開発と性能評価」に取組む予定としていた。前者の検討項目については、当初予定通りの開発と評価を行うことができた。一方、後者の検討項目については、SPMとVOCの同時除去装置の概略開発までは行うことができたが、その性能評価は十分に行えたとは言い難い。よって、現在までの達成度を(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、当初の研究計画に沿って研究を推進する。本年度に充分検討できなかった「PM0.1~PM2.5,VOC同時除去装置の性能評価」をまず重点的に検討し、その検討結果を基にして、「マイクロ波照射によるVOC 等有害成分分解性能の向上・評価」「分離径制御流同伴型サイクロンを用いた気液反応による粒子創製プロセスの開発と評価」なる検討項目の研究を行う。即ち、前者の検討項目では、開発したサイクロンシステムをマイクロ波照射場に設置することで、触媒層を担持したサイクロン側壁を昇温し、有害成分の分解効率を向上させることを試み、その効果を評価する。マイクロ波を照射することで、触媒層が昇温される効果だけではなく、ヒートスポットの形成や電磁界の集中による触媒活性効果も見込めるため、大きな効果が得られると期待している。後者の検討項目では、開発した分離径制御流同伴型サイクロンにおいて、主流に反応液、制御流に反応ガスを導入し、気液反応による粒子製造実験を行う。モデルケースとして、反応液にCa(OH)2水溶液、反応ガスにCO2 を用いてCaCO3 粒子を合成する。この際の物質移動係数や反応率等を測定し、既存の充填塔や気泡塔のそれらと比較することで性能を把握する予定にしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画通り、設備備品としてマイクロ波発生装置を購入し、ガラス器具・試薬・試料粉体などの消耗品として使用する。また、国内の調査旅費としても利用する。また、本年度の研究業績は非常にオリジナリティーが高く、顕著な結果であるので、当初は予定していなかった海外の国際学会への外国旅費としても使用する。また、本年度十分に行えなかったSPMとVOCの同時除去装置の性能評価に使用する予定であった研究費を次年度に使用し、本研究項目の遂行に充当する。即ち、クロマトグラフやマスフローコントローラの購入等を予定している。
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