研究課題/領域番号 |
23560913
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
三島 健司 福岡大学, 工学部, 准教授 (40190623)
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研究分担者 |
志村 英生 福岡大学, 医学部, 教授 (80178996)
入江 圭一 福岡大学, 加齢脳科学研究所, ポストドクター (50509669)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | バイオスカフォールド / 超臨界流体 / 二酸化炭素 / 超音波 / 再生医療 |
研究概要 |
本研究では、CO2を機能性溶媒として利用し、豚などの異種哺乳動物の組織に超音波照射することで、細胞成分を除去し、再生医療に利用できるバイオスカフォールド(細胞外マトリックス)の製造法を開発し、臨床応用を検討することを目的とした。23年度は、異種哺乳動物の組織から拒絶反応の原因となる細胞成分を除去し、高い細胞密度を実現するバイオスカフォールド生体材料を開発するために、超臨界二酸化炭素超音波分散法を応用し、異種脱細胞化組織の生成を試みた。1)再生医療に利用可能な異種脱細胞化組織の創製のために、超臨界二酸化炭素中で超音波照射によりラットならびに豚の組織から拒絶反応の原因となる細胞成分の除去を行い、異種脱細胞化組織調整実験を行った。2)超臨界二酸化炭素中での超音波ならびに攪拌操作を応用し、細胞浸透性の高いナノバブルを組織の細胞内に導入後、ラットならびに豚組織から超臨界二酸化炭素存在下で細胞成分を分離し、成分分析を行った。3)処理した組織については、組織検査用薄片試料を常法により調製し、ヘマトキシリン・エオシン染色した後、光学顕微鏡にて脱細胞率を評価した。4)二酸化炭素抽出により脱細胞化を行った異種脱細胞化組織(細胞外マトリックス)を対象として、ストレスプローブを用いて組織のダメージを測定した。また、調整した異種脱細胞化組織と市販の生体吸収性人工材料とを用いて、各種の細胞の培養実験を系統的に行い、再生医療用素材としての性能評価を行った。 以上のような実験から、CO2を機能性溶媒として利用し、豚ならびにラットの異種哺乳動物の組織に超音波照射することで、細胞成分を除去し、再生医療に利用できるバイオスカフォールド(細胞外マトリックス)の製造に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の平成23年度の達成目標としたCO2を機能性溶媒として利用した異種哺乳動物の組織に超音波照射により生成するバイオスカフォールド製造は、実験的に検証されており、研究の目的をほぼ達成している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の平成23年度の達成目標として、「CO2を機能性溶媒として利用した異種哺乳動物の組織に超音波照射により生成するバイオスカフォールド製造」をかかげ、予定通りそれらについて実験的に検証できたので、平成24年度は、当初の計画通り、ラットの生体組織の脱細胞化組織を用いて行った細胞増殖の知見をもとに、異種脱細胞化組織(細胞外マトリックス)を用いて、ラットの組織再生実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度、当初予定したよりも、バイオスカフォールド試作実験が、再現性が高かったために、予定した商法品の購入が少量で済み、結果的に繰越金を生んでしまった。予算を有効に使用するために、平成24年度は、繰越金も利用して、次のように研究を行う。すなわち、ラットの生体組織の脱細胞化組織を用いて行った細胞増殖の知見をもとに、異種脱細胞化組織(細胞外マトリックス)を用いて、ラットの組織再生実験を行う。まず、圧力負荷の少ない静脈血管に対する適応性について実験的に検討する。十分な柔軟性が得られれば比較的圧力の高い動脈系の血管再生への適応性を検討する。他方、細胞培養に関して、市販の生体吸収性人工材料と調整した異種脱細胞化組織(細胞外マトリックス)を用いて、心筋細胞の培養実験を行い、増殖組織の電気応答性を測定することで、培養素材の機能性を評価する。また、血管新生因子、細胞増殖因子、組織形成に係る遺伝子の影響を調べるために、細胞内から取り出した各化学種について、ガストロマトグラフ質量分析計(GC-MS;現有設備)にて分析する。
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