間伐材や木くずなどのセルロース系バイオマスからのバイオエタノール製造においては、硫酸を用いない環境負荷の少ないセルラーゼ酵素を用いた酵素糖化法に期待が寄せられている。効率よく酵素糖化を行うためには前処理技術開発が極めて重要である。粉砕処理は古くから酵素糖化のための前処理として効果が高いことが知られているが、消費電力が大きいという問題を有していた。我々は、コンバージミルという高エネルギー付加型の高効率粉砕機を開発し、セルロース系バイオマスのメカノケミカル粉砕を行ってきた。 本研究では、1Lバッチ式コンバージミルと6L半連続式コンバージミルを使用し、木質原料のコンバージミル粉砕と酵素糖化特性について検討し、さらに、粉砕投入エネルギーの観点で考察し、酵素糖化法によるバイオエタノール製造のための高効率粉砕を目指した。その結果、以下のような結論を得た。 ①杉おがくずなどの木質バイオマスをコンバージミルでメカノケミカル処理することで、原料の微粒子化・非晶質化が進行し、酵素糖化特性が大幅に向上した。②原料の非晶質化が大きいほど、酵素糖化性に優れるということがわかった。③コンバージミルのような媒体ミルにおいて、木質バイオマスを粉砕するとき、まず、微粒化が起こり、その後に非晶質化が起こるということがわかった。④6L半連続式コンバージミルは、1Lバッチ式コンバージミルと、酵素糖化特性の評価において、ほぼ同等の粉砕性を示すことを確認した。⑤6L半連続式コンバージミル粉砕において、ハンマーミル(微粒子化)とコンバージミル(非晶質化)を組み合わせた多段前処理粉砕(乾式複合メカノケミカル粉砕)が効果的であった。また、ハンマーミル後、コンバージミル10分間粉砕(HAM+CONV10min)で、高い糖化特性を示し、粉砕所要エネルギーが最小になることがわかった。
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