本研究では、半導体デバイスの製造等に用いられるCVDプロセスを対象とし、研究開発の高速化、省力化を目的として、CVD装置内部 における反応機構の解析を、人手を介さず自動的に行うシステムの開発を目指した。本年度は、昨年度に引き続き、複雑な反応系による解析のため、システムの性能の向上を目指し、実装する最適化アルゴリズム候補の性能評価を行った。 具体的には、反応機構モデルの提案、評価を行う推論エンジン部分と、反応機構モデルの的確性を定量的に評価するために必要な実験結果の予測値を計算するシミュレーター部分に、候補となる最適化アルゴリズムを導入して、パラメータの最適化を行い、自動解析システムの解析能力を評価した。昨年度、特に優れたパフォーマンスを持つことが示された実数値アルゴリズムのREX-star+JGG法 (RJ)、および、生物の様々な仕組みや機構から発想を得たBio-inspiredアルゴリズムの一種であるArtificial Bee Colony (ABC)とCovariance Matrix Adaptation Evolution Strategy (CMA-ES)の3つを候補とし、より広範囲の条件で性能評価を行った。その結果、比較的計算誤差によるノイズが生じやすい推論エンジン部分ではRJが総合的に最も優れ、比較的ノイズが生じにくいシミュレーター部分ではCMA-ESが最も優れていた。以上より、RJとCMA-ESを適切に配置したハイブリッド型システムが最も優れたパフォーマンスを示すことが分かった。 また、構造が複雑な商用の成膜装置に対応するためにCFDシミュレーターの自動解析システムへの実装を目指した。CFDの計算過程を単純な数式でモデル化することに成功し、成膜結果の予測に要する時間を大幅に削減し、実用的な計算時間内でCFDを用いた自動解析が実現可能であることを示した。
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