大気圧プラズマを利用した水質浄化法の特徴として,気相に酸素を含まない系でも水の分解によりヒドロキシルラジカルなどの酸素種活性種を生成できる点が挙げられる.そこで,液相中の酸素種活性種濃度をさらに高めることを目的として,酸素を微細液滴のキャリヤーガスまたは大気圧プラズマガスに混合し,液相に加え気相の酸素源を利用するプラズマ反応場を創成した.アクリル製の発生槽の底部に超音波振動子を装着しイオン交換水を霧化させた.プラズマジェットは石英管(内径1.5 mm)の外周に設置した同軸上の2つの銅電極(距離5 mm)間に高電圧を印加することで発生させた.接触後の微細液滴は共通摺合冷却器(グラハムタイプ)を通じて水溶液として回収した.酸素種活性種濃度の指標として,反応後の液の過酸化水素濃度を硫酸チタン法を用いて定量した.キャリヤーおよび大気圧プラズマのベースガスとしてヘリウムを使用し,酸素/ヘリウム系での酸素モル分率が微細水滴径およびプラズマジェットの接触反応に及ぼす影響について検討した結果,以下の知見を得た.1)キャリアガスがヘリウムの場合は酸素に比べ超音波霧化で得られる平均水滴径は小さい.2) キャリアガスが酸素の場合に,過酸化水素生成濃度が高いが平均水滴は大きい.これより,キャリヤーガス中の酸素がヘリウムプラズマジェットとの接触により活性化し,水滴からのヒドロキシルラジカルの生成を促進することが示唆される.3) 酸素/ヘリウム系プラズマを微細水滴に接触させると,酸素モル分率が1 %で反応後の水溶液の過酸化水素濃度が極大を示す.これより,プラズマソースガスとしてのヘリウムへの酸素の混合はプラズマ反応場における気相の酸素源を利用する酸素種活性種の生成とプラズマジェットと液滴との接触頻度の両者に影響を及ぼすと考えられる.
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