研究課題/領域番号 |
23560924
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
村上 能規 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (70293256)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | レーザアブレーション / 金属ナノ微粒子 / 超臨界二酸化炭素 / 表面被覆 |
研究概要 |
超臨界二酸化炭素中に銀基板を配置、超臨界二酸化炭素中に有機溶媒を溶解させた状態でレーザ光を上部から集光照射し、超臨界二酸化炭素中に銀ナノ微粒子を生成させるとともに、生成した銀ナノ微粒子表面に超臨界二酸化炭素に溶解した有機溶媒をレーザ加熱で熱分解、銀ナノ微粒子への炭素被覆を試みた。エタノールを10mLおよび二酸化炭素を反応容器に封入し、二酸化炭素の圧力および温度をそれぞれ50℃、3MPaおよび50℃、10MPaの条件で銀板にレーザ集光照射、得られた銀ナノ微粒子のエタノール懸濁液のプラズモン吸収スペクトルを観察すると二酸化炭素50℃、3MPaで観測された400nm近傍に観測される銀プラズモンの吸収ピークは二酸化炭素が超臨界状態になる50℃、10MPaにおいて消滅した。このことは二酸化炭素が超臨界条件においてエタノールは超臨界二酸化炭素中に溶解し、溶解したエタノールが銀ナノ微粒子上で熱分解、銀ナノ微粒子表面が炭素被覆され、プラズモンのピークが消滅したと考えられる。さらに、このことを確かめるために、溶媒をエタノールからトルエンに変えて、同様の実験手法で銀板のレーザ集光照射を行い、銀のプラズモンピークがどのように変化するかを観察した。エタノールが溶媒の時と異なり、室温、減圧下のトルエン溶液(10mL)に銀板へのレーザ集光照射を行った場合においても銀プラズモン吸収は消滅した。さらに、反応容器中のトルエン溶液に二酸化炭素を封入し、50℃、10MPaの超臨界状態にして、銀板へのレーザ集光照射を行った結果、室温、減圧下のトルエン溶液(10mL)の時の可視域に伸びる吸収が消滅し、350nmで急激に減衰する吸収スペクトルに変化した。このように有機溶媒や、二酸化炭素の温度および圧力を変えることで生成する銀ナノ微粒子の被覆状態が大きく変わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
銀ナノ微粒子のレーザアブレーションによる生成と溶媒を有機溶媒に被覆した場合のプラズモンの吸収ピークの消滅、超臨界二酸化炭素に有機溶媒を溶解させた状態でのレーザアブレーションによる銀ナノ微粒子の有機溶媒への表面被覆等、当初、計画された実験を実行し、有機溶媒による簡便な金属ナノ微粒子の表面被覆が可能であることを示すことができた。一方で、新規に購入した大気開放型STMによるナノ微粒子の観察やフーリエ変換赤外分光(FTIR)装置による表面状態の観察はまだ、十分に行っておらず、今後の課題として残されている。また、銀ナノ微粒子による表面被覆観察がプラズモン吸収による測定が可能であり容易であるが、銅ナノ微粒子について同様に行ったが、プラズモン吸収が存在しないため、表面被覆されたかどうかの確認が難しい。透過型電子顕微鏡の使用の可否を含め、今後、プラズモン吸収以外の表面被覆の観察法の確立が研究を進める上において非常に重要であると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の過程で、レーザを有機溶媒あるいは有機溶媒を溶解させた超臨界二酸化炭素中に集光照射すると、ピレンやナフタレン等の多環芳香族化合物が生成することがレーザ照射後の溶液の蛍光測定により明らかになった。これは、従来考えていた金属ナノ微粒子上で有機溶媒が熱分解し、表面を被覆するのではなく、有機溶媒自身がレーザ集光場で熱分解、多環芳香族化合物へ成長していることを意味している。このようにできた多環芳香族化合物がさらに金属表面上で析出、被覆するというメカニズムが考えられる。そこで、本年度はレーザ集光照射による有機溶媒から多環芳香族化合物生成のメカニズムに関して精力的に研究し、金属ナノ微粒子の表面被覆に対するメカニズムの解明を行いたい。また、昨年度、詳しく行なわなかったSTMによるナノ微粒子観察や依頼分析等を活用した表面被覆した炭化水素の状態分析などを引き続き行いたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.レンズや誘電多層膜ミラー等の高価なレーザ光学系の購入2.試薬、試料ガス類の調達3.国内学会における成果発表や論文発表における投稿料の費用ねん出4.透過型顕微鏡(STM)やXPS、ラマン分析などの表面被覆された炭素の状態解析の依頼分析にかかる経費
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