研究課題/領域番号 |
23560929
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
島津 省吾 千葉大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10178957)
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キーワード | 固体不斉触媒 / 開脚型不斉ロジウム錯体 / 粘土鉱物 / インターカレーション / ピラー化 / ジアミン配位子 / ジホスフィン配位子 / 静電引力 |
研究概要 |
本申請では層状結晶構造を持つイオン交換体(ホストイオン)に、開脚(Straddle)型不斉ピラー錯体(ゲストイオン)を組み込むことで固体不斉反応場を創製する。 1.光学純度を高めた配位子とStraddle錯体の合成:長鎖アルキル基を持つジアミノ型およびジホスフィン型不斉配位子の合成と各不斉錯体の合成 1)ジアミン型:シクロへキシルジアミンと直鎖アルデヒドからジアルキルシクロへキシルアミン配位子(Cn-(S)-CHDA、n=0~18)を合成した。これを[RhCl(COD)]2と反応させることで不斉Rh(I)錯体(Rh-Cn-(S)-CHDA)を合成した。合成マイカのテニオライト(TN)にRh-Cn-(S)-CHDAカチオンを導入し、Straddle型層間触媒Rh-Cn-(S)-CHDA/TNとした。2) HPLCで精製を行った配位子C6-CHDA(H)と、従来のシリカゲルカラムでの精製物C6-CHDA(C)とを旋光度で比較すると、それぞれ、100と60.4となり顕著な差が現れ、IR, NMRの分析では識別出来ない大きな差が確認できた。3)ジホスフィン型: L-酒石酸型Cn-DIOP配位子の合成を継続中。 2.Straddle型不斉層間触媒による不斉水素化反応 -HPLC分取配位子の効果- アセトフェノンの水素化反応を(263 K, H2 3 MPa, MeOH中)、Rh-C6-(S)-CHDA(C)、Rh-C6-(S)-CHDA(H)およびRh-C6-(S)-CHDA(H)/TNの3種類の触媒反応を行ったところ、不斉選択性は、それぞれ、7.0%e.e.(R)、15.4(R) %e.e.および51.3%e.e.(R)であった。不斉選択性向上への(1)光学純度の効果と(2)マイカ層間固定化の効果が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.触媒合成について:ジアミン型錯体およびStraddle型層間触媒の合成については、ほぼ100%の達成度である。2)ジホスフィン配位子では、リン原子にアルキルフェニル基を2本結合させたbis(4-hexylphenyl)phosphinic acidと4,5-bis(bromomethyl)-2,2-dimethyl-1,3-dioxolanを反応させて、Cn-DIOP配位子を合成させる。残り2段階で合成出来るところまで到達した。得られたCn-DIOPを用いてRh錯体の合成行うことから、ほぼ予定通りである。 2.触媒反応について:ジアミン型の触媒については、Rh-Cn-(S)-CHDA/TN(n=6)触媒を用いたアセトフェノンの水素化反応を行った。光学純度を高めた効果が著しく発揮された(錯体触媒のみの比較で、HPLC分取前後で、それぞれ、不斉選択性は7.0%e.e.と15.4%e.e.)。今まで、NMRのみで行っていた生成物の純度は、今後旋光度のデータを指標にすべきであることが分かった。また、Straddle型不斉層間触媒を用いた同条件でのアセトフェノンの水素化反応では、51.3%e.e.(錯体のみでは15.4%e.e.)と顕著な層間の立体制御効果が現れた。今後、より詳細な反応条件(反応温、反応溶媒、水素圧)などの諸条件を検討する必要がある。達成度85%。2)ジホスフィン型触媒は、配位子の合成完成まであと2段階の所まで到達した。今後、Rh触媒、Straddle型不斉層間触媒を合成し、触媒反応を行う。ほぼ予定通り。
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今後の研究の推進方策 |
1.触媒合成について:1)ジアミン型錯体および層間固定化触媒の合成については、約85%程度の達成度であり、分取液クロマトにより精製した高純度な配位子が触媒反応での不斉選択性を大幅に向上させる効果を確認していることから、今後、分取精製をした配位子を用いてStraddle型不斉層間触媒を合成する方針である。2)ジホスフィン配位子では、Pに直接アルキル鎖を結合するのではなく、フェニル基を介して炭素数を増加させる方法で合成を推進する。すなわちアルキルフェニル基を2本結合させたbis(4-hexylphenyl)phosphinic acidと4,5-bis(bromomethyl)-2,2-dimethyl-1,3-dioxolanを反応させて、Cn-DIOP配位子を合成させる。残り2段階でCn-DIOP配位子が合成出来る予定で、得られた配位子を用いてRh錯体の合成を行う。このRh錯体を合成マイカにインターカレーションさせ、ホスフィンを用いた初めてのStraddle型不斉層間触媒の合成を行う。この配位子合成についても、従来のカラム精製から、液体クロマトグラフを用いた精製法を用いた高純度な配位子を得る予定である。 2.触媒反応について:1)ジアミン型の触媒については、HPLC分取で光学純度を上げたRh-Cn-(S)-CHDA/TN触媒がアセトフェノンの水素化反応で不斉選択性を著しく高めたことから、今後、より詳細な反応条件(反応温、反応溶媒、水素圧)などの諸条件を検討する。さらに、触媒再利用などの安定性についても検討を加える。2)ジホスフィン型触媒は、今後合成したStraddle型不斉層間触媒を用いた反応を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.触媒合成について:液体クロマトグラフで分取にて光学純度を高めた配位子で合成した触媒が、触媒反応での不斉選択性向上に著しい効果を示すことを確認したことから、液体クロマトグラフのカラムの購入に研究費を充当する予定である。 2.触媒反応について:種々の基質を用いた反応を行う予定である。主に基質の購入および反応生成物の分析などに研究費を充当する予定である。
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