研究概要 |
我々が近年初めて合成に成功した新規ゼオライト類YNU-2およびその前駆体YNU-2Pの化学挙動は多様性に富み,欠損部位の生成とその修復を意図的に行うことができる。これまでに本物質の欠損部位の精密解析を行い,触媒化するための基本的な知見を蓄積してきた。本研究では,欠損部位を足がかりにした触媒活性点としてのTiの導入と高性能なフェノール酸化触媒への展開を主要目的としている。オレフィンのエポキシ化に優れた触媒性能を示すTi-BEAやTi-MWWは,フェノール酸化には適さない。このように難度の高いフェノール酸化反応に対し,Ti-YNU-2触媒の高性能化を図ってきた。平成23年度に各条件で調製したTi-YNU-2を酸化触媒とするフェノールの酸化の実施へ向け,平成24年度から25年度にかけてはさらなる調製法の検討を行った。 (1)YNU-2へのTi導入量の増加,(2)Ti-YNU-2の疎水性向上の実現には「Ti導入時」および「焼成時」の[温度]と[雰囲気]が重要なファクターである。Ti導入温度を200~300℃,水蒸気分圧を10~50 kPaの間で変化させた。その後の焼成条件は450℃, 3 hとした。その結果,Ti導入温度は250℃,水蒸気分圧は10 kPaの時にTiの導入が効率よく起こることが判明した。導入時間は24 hである。これらの知見に基づきTi-YNU-2の触媒性能の向上を図った結果,平成25年度には着実な触媒性能の向上に成功し,高い活性(収率74%)と立体選択性(パラ選択率92%),極めて高い触媒回転数(TON 923)を実現した。さらに,擬in-situ UV-vis測定により,活性点の局所構造と触媒性能の相関をも明らかにした。
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