研究課題/領域番号 |
23560932
|
研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福長 博 信州大学, 繊維学部, 准教授 (30313844)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 非白金炭素系触媒 / 酸素還元活性 |
研究概要 |
白金の酸素還元能を代替する触媒として、金属フリーで安価かつ高性能な窒素含有炭素触媒である、シルク(絹)を原料とする「シルク活性炭」の開発に取り組んだ。 シルクの炭化条件(温度と時間)を変えることで窒素・炭素比を変え、酸素還元活性との関係を調べた。シルク活性炭は、一次炭化→ボールミルによる粉砕→二次炭化→水蒸気賦活という工程で作製した。得られたシルク活性炭について、X線光電子分光(XPS)によりN1s,C1sスペクトルを測定し、窒素と炭素の比率を求めた。また、XPSスペクトルのピーク分離を行い、4種類の窒素の定量を行った。また、窒素吸着等温線測定とその解析により、比表面積、平均細孔径の定量を行った。更に、回転ディスク電極によるサイクリックボルタンメトリー(CV)を用い、電解液中を窒素及び酸素で飽和したときの、電位走査時の電流の比較により酸素還元活性を求めた。 高温条件で、炭化した試料について、窒素種の影響を見たところ、それよりも低い温度で炭化したシルク活性炭と比較して、窒素含有量は少なかったが、酸素還元開始電位は、それほど大きく低下しなかった。このことから、酸素還元活性の活性点は窒素自体でなく、窒素があることで炭化時に形成されたサイトが活性点となっていることが示唆された。一方、電流について比較したところ、高温で炭化したシルク活性炭の電流は低温のものと比べて小さかった。高温炭化したものは、比表面積が小さく、そのために、電流が流れなかったと考えられる。このことから、高活性なシルク活性炭を得るためには、酸素還元開始電位だけでなく、電流が得られるように、比表面積も考慮して炭化温度を決定する必要があることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の目的としていた、高温で炭化したシルク活性炭について、窒素種および細孔構造を定量し、電気化学測定による酸素還元活性との関係から、酸素還元活性の活性サイトについての知見を得ることができた。更に、当初の研究計画以上に、シルク活性炭を燃料電池の電極として用い、発電特性を向上させることができた。また、次年度の研究計画に含まれていた、ボールミルによる比表面積の増加が活性に及ぼす影響についても既に、一部の成果を得ることができている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、炭化温度を高くすることで窒素種は減少するが、酸素還元開始電位の大幅な低下は見られなかった。この温度は、通常の活性炭作製の条件よりも高く、活性サイトについての知見を更に得るため、炭素の状態等の観察を行う。また、これまでの研究で酸素還元電流については、比表面積が大きく支配していることがわかった。シルク活性炭について、水蒸気賦活あるいは、ボールミルでの粉砕による比表面積の増加が酸素還元活性に及ぼす影響について検討する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究において、次年度の研究計画で使用予定であった装置について、所属研究機関が保有する装置を連携研究者が用いることを検討した。これにより、触媒作製と評価を平行して行うことで、元の研究計画よりも早く進めることが可能となった。そのため、当初計画で見込んだよりも安価に研究が進行したため、次年度使用額が生じた。そこで、引き続き触媒作製については連携研究者などと協力して行い、研究代表者は触媒評価の方に注力することで、更に研究を促進する。
|