研究課題/領域番号 |
23560932
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福長 博 信州大学, 繊維学部, 准教授 (30313844)
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キーワード | 固体高分子形燃料電池 / 非白金炭素系触媒 / 酸素還元活性 |
研究概要 |
白金の酸素還元能を代替する触媒として、金属フリーで安価かつ高性能な窒素含有炭素触媒である、シルク(絹)を原料とする「シルク活性炭」の開発に引き続き取り組んだ。 シルクを炭化したのちの賦活条件を変えることで、細孔と酸素還元活性との関係を調べた。シルク活性炭は、一次炭化 →ボールミルによる粉砕→二次炭化→二酸化炭素賦活という工程で作製した。得られたシルク活性炭について、X線光電子分光(XPS)によりN1s,C1sスペクトルを測定し、窒素と炭素の比率を求めた。また、XPSスペクトルのピーク分離を行い、4種類の窒素の定量を行った。また、窒素吸着等温線測定とその解析により、比表面積、平均細孔径の定量を行った。更に、回転ディスク電極によるサイクリックボルタンメトリー(CV)を用い、電解液中を窒素及び酸素で飽和したときの、電位走査時の電流の比較により酸素還元活性を求めた。 窒素のXPSスペクトルより、CO2賦活により、全窒素量が減少していることがわかる。ピリジン型の窒素は、賦活の初期で減少し、その後変化が小さくなった。賦活時間の増加とともに、ピロール型の窒素が減少したのに対し、グラファイト型の窒素の変化量は小さかった。酸素還元反応の電流は賦活処理により増加したが、処理時間が長くなると逆に減少した。酸素還元開始電位は、比表面積の影響をそれほど受けなかった。メソ孔体積で規格化した酸素還元電流は、0.3V以上ではいずれのシルク活性炭についても同程度となった。これより、酸素還元電流はメソ孔に支配されていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究の目的としていた、賦活処理したシルク活性炭について、窒素種および細孔構造を定量し、電気化学測定による酸素還元活性との関係から、酸素還元活性に及ぼすメソ孔の影響についての知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で、炭化条件と賦活条件をかえてシルク活性炭を作製し、窒素種および細孔構造を定量し、電気化学測定による酸素還元活性との関係から、酸素還元活性には、窒素量よりもメソ孔が影響していることがわかった。そこで、細孔分布の制御を行うための賦活条件について更なる検討を行う。メソ孔を増やすのに賦活条件を最適することで、更なる性能向上を図る。また、これまで明確になっていない、活性サイトについての知見を更に得るため、XRDやラマン分光による解析を行い、結晶構造及び結晶の欠陥についての解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究計画で使用予定であった装置について、研究代表者の所属研究機関が保有する装置を連携研究者が用いることにより、触媒作製と評価を平行して行い、当初の研究計画よりも早く進めることが可能となった。そのため、装置の購入が不要となり、当初計画で見込んだよりも安価に研究が進行したため、次年度使用額が生じた。そこで、引き続き触媒作製については連携研究者などと協力して行い、研究代表者は触媒評価の方に注力することで、更に研究を促進する。
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