白金は多くの産業で用いられ、高価で希少なため、代替材料の開発が大きな課題である。白金の酸素還元能を代替する触媒として、金属フリーで安価かつ高性能な窒素含有炭素触媒である、シルク(絹)を原料とする「シルク活性炭」の開発を行った。酸素還元触媒としてのメカニズムの解明および性能向上を目的として、作製条件を変え、活性に関与すると考えられる窒素種および細孔構造を定量し、電気化学測定による酸素還元活性との関係について研究を行った。 シルク活性炭は、一次炭化 →ボールミル粉砕→二次炭化→賦活という工程で作製した。炭化及び賦活条件を変えて、酸素還元活性との関係を調べた。得られたシルク活性炭について、X線光電子分光(XPS)によりN1s,C1sのスペクトルを測定し、窒素と炭素の比率を求め、スペクトルのピーク分離を行い、4種類の窒素の定量を行った。また、窒素吸着測定とその解析により、比表面積、平均細孔径の定量を行い、XRDとラマン分光により、結晶構造及び結晶の欠陥についての解析を行った。酸素還元開始電位および酸素還元電流について、回転ディスク電極によるサイクリックボルタンメトリー(CV)を用い、電解液中を窒素及び酸素で飽和したときの電位走査時の電流の比較により求めた。 炭化後賦活したシルク活性炭のXPSスペクトルより、賦活により全窒素量が減少し、ピリジン型、ピロール型の窒素が減少したのに対し、グラファイト型の窒素の変化量は小さく、最も安定なことが分かった。酸素還元電流は賦活処理により増加したが、処理時間が長くなると逆に減少した。メソ孔体積で規格化した酸素還元電流は、高電位領域ではほぼ一定であり、酸素還元電流は窒素量よりもメソ孔に支配されていることが示唆された。また、酸素還元開始電位は、比表面積の影響をそれほど受けず、高い炭化温度によるグラファイト型の窒素種が高活性に寄与することが示唆された。
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