研究課題/領域番号 |
23560935
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
古南 博 近畿大学, 理工学部, 准教授 (00257966)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子 / 表面プラズモン共鳴 / 光触媒 / 可視光 / コロイド / 酸化セリウム |
研究概要 |
表面プラズモン共鳴(SPR)による吸収とは金属の微粒子が特定の波長の光を吸収すると,金属微粒子の大きさや種類により色が異なって見えることである.通常,金属中の電子は光と相互作用しないが,金属表面やナノ微粒子中の電子は,ある条件で光と相互作用する.我々は,Au担持酸化セリウム(CeO2)がSPRによる強い吸収を示し,この触媒系が緑色光の照射下において,水中有機化合物を完全に無機化することを見出した.しかし,Auの粒子径や酸化物の物性が異なるため,これらの光触媒活性に差異が発現する理由は明らかになっていない.本研究では,物性制御したTiO2上に均一なAuコロイド粒子を安定に担持することを試みた. Auコロイドの調製はクエン酸ナトリウムによる還元法により行った.コロイド光析出法によりAu/TiO2を調製した. 調製したAuコロイドの平均粒径は12.8 nmで比較的シャープな分布を示した.また,Auコロイドの粒径を維持したままTiO2上に担持することに成功した.さらに,各温度で焼成した様々なTiO2に対してもほぼ同じ粒径のAuコロイドを担持することができた.さらに,拡散反射スペクトルから得られたピークトップの位置は大きく変化しなかった.水中ギ酸の分解反応において,調製したAu/TiO2は定常的にギ酸をCO2に分解した.その反応速度は各TiO2の比表面積にほぼ比例したことから,Auの担持量や粒径がほぼ同じ場合,Auを保持するTiO2の比表面積がその活性を支配することが明らかになった. また、Au表面へのCu修飾によるSPR吸収の長波長化に成功し、これらが各種有機化合物を無機化することを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の実施計画は以下の通りである。1)金属ナノ粒子/金属酸化物半導体の合成法および特性制御法の確立、2)金属ナノ粒子/金属酸化物半導体の長波長応答化、3)金属ナノ粒子/金属酸化物半導体による有機化合物の分解・無機化今年度の成果は以下の通りである。1)金属源の種類、還元剤、反応温度、各濃度、還元方法などが金属ナノ粒子の粒径や形態に及ぼす影響を検討し、その合成方法を確立した。また、様々な金属酸化物半導体を集め、それらに、各種金属ナノ粒子を安定に固定化する方法についても検討し、その合成方法と特性制御法を確立した。2)二種類の金属源を用いて、たとえば、合金やコア-シェル構造のナノ粒子を金属酸化物半導体の表面に安定に固定化することを目指し、Au/CeO2のLSPRによる吸収中心波長は545 nmであるが、Auコア-Cuシェル構造のナノ粒子をCeO2に固定化することにより、LSPRによる吸収中心波長が625 nmまでレッドシフトすることに成功した。3)上記で合成した様々な金属ナノ粒子/金属酸化物半導体を用いて、可視光照射下、各種有機化合物の分解・無機化を検討し、各種有機酸の完全無機化を確認した。とくに、Auコア-Cuシェル/CeO2では、赤色LED光により分解が進行することを見いだした。
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今後の研究の推進方策 |
研究は計画通りに進捗している。平成24年度の研究計画通りに進める。1)金属ナノ粒子/金属酸化物半導体による選択的反応 各種金属ナノ粒子/金属酸化物半導体を用いて、可視光照射下における選択反応を検討する。つまり、アルコールの部分酸化反応によるアルデヒドの生成、特定官能基だけを酸化する化学選択的酸化反応などを検討する。光源には、カットフィルターを装着したキセノンランプ、あるいはモノクロメーターで単色化したキセノンランプなどを使用する。さらに、エネルギー消費の少ないLED(緑色や赤色)も使用する。2)金属ナノ粒子/金属酸化物半導体による可視光光触媒反応の機構解析 LSPRによる光触媒反応には様々な要素が含まれている。Au/CeO2など、単純な材料系を取り上げ、各種分光法(作用スペクトル、高速分光、光音響分光法PAS)および電気化学測定の結果を組み合わせて、反応機構の解析を行う。とくに、金属ナノ粒子による酸化反応、励起電子と酸素の反応については、これまでの別の触媒系の結果と比較しながら、その本質に迫る。また、電子受容体を代えた反応系(水素生成系)についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度交付内定額(1300千円)は申請額(1700千円)より減額されているので、消耗品費を圧縮して対応する。つまり、消耗品費:600千円、旅費:400千円、謝金:300千円を計画している。
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