研究課題/領域番号 |
23560937
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
青柳 将 独立行政法人産業技術総合研究所, ナノシステム研究部門, 主任研究員 (50356333)
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キーワード | 自己集合 / ナノチューブ / 配位錯体 / 金属 / 不均一系触媒 / 酸化反応 / 還元反応 |
研究概要 |
グリシルグリシンとパルミチン酸から合成されるペプチド脂質とコバルトイオンが錯形成をして、ナノチューブ構造に自己集合する。このコバルト錯体タイプ有機ナノチューブ(Co-ONT)がスチレンの水中、過酸化水素によるベンズアルデヒドへの酸化反応において高い触媒活性を示すことを見出した。反応はスチレンと過酸化水素水、このCo-ONT触媒を40℃で混合撹拌するだけで進行する。すなわち、有機溶媒を必要としない、穏やかな条件での酸化反応の実現が期待できる。 また、酸化反応終了後、ろ過により触媒を分離、洗浄したのち、同様の酸化反応を行って、繰り返し耐性を検討したところ、この操作を5回繰り返しても、触媒活性、選択性のいずれも低下しないことが分かった。 これまでに触媒活性を明らかにしてきたニッケル錯体タイプ有機ナノチューブ(Ni-ONT)、銅錯体タイプ有機ナノチューブ(Cu-ONT)はスチレンのみならず種々の不飽和結合、アルコール、アルデヒドの酸化触媒活性をしめしたが、Co-ONTはスチレンの酸化反応のみで高い触媒活性を示した。またNi-ONT、Cu-ONTを触媒としたスチレンの酸化反応ではスチレンオキサイドが主生成物として得られた、Co-ONTを触媒とした場合はベンズアルデヒドが主生成物として得られ、生成物の選択性が異なっていた。Co-ONTを構成するペプチド脂質とコバルトイオンは理論上2:1のモル比で錯形成しうるが、Co-ONTの組成を分析したところ、コバルトイオンは理論値よりはるかに少量であることが分かった。したがって、金属イオンあたりの触媒活性はこれまでのNi-ONT、Cu-ONTと比較すると極めて高いことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに発表してきた金属錯体タイプ有機ナノチューブと異なり、Co-ONTはチューブを構成するペプチド脂質とコバルトイオンの錯形成が量論的ではないことが分かってきた。系としては複雑になり、研究の進捗、反応の検討に時間がかかっているが、興味深い結果であると考えている。 また、複数種の金属イオンを共存させたナノチューブ形成については、論文、学会発表には至らなかったが、評価法はおおむね確立し、予備的知見が得られつつある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、Co-ONT触媒系について、触媒のターンオーバーなどの詳細を明らかにする。次に複数種の金属イオンが配位したM-ONTの合成を試み、それらの触媒活性を評価する。さらに金属イオンを還元し得る脂質から自己集合した構造体について、それらの酸化反応における不均一系触媒としての応用を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬および消耗品費、M-ONTの組成、形態に関する依頼分析費(ICP-MS, TEM等)、学会参加費を計上する。また、昨年度所属研究機関の研究設備リサイクル制度で入手したGC-MSを本研究で使用するための整備費を計上する。
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