研究課題/領域番号 |
23560943
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
飛松 孝正 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (30188768)
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研究分担者 |
森 光一 岡山大学, 自然科学研究科, 助教 (50379715)
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キーワード | バクテリア多面体オルガネラ / pduオルガネラ / ジオールデヒドラターゼ / 酵素システム |
研究概要 |
昨年度、補酵素B12 関与ジオールデヒドラターゼ(DD)と再活性化因子(DDR)やPduOアデノシルトランスフェラーゼが協同して不活性化補酵素の再生系システムとして働いている可能性をに示した。このシステムとしての機能がPduOに特異的であることが、親菌のクレブシラがもつCobAやEutTというアデノシルトランスフェラーゼを代わりに用いた実験で示された。さらに、このシステムとしての働きがバクテリアPduOのみに特徴的にみられるC末ドメインではなく、ヒトからバクテリアに存在するN末端触媒ドメインに依存することも示された。 DDのβとγサブユニットのN 末端ペプチドがそれぞれ同種サブユニットN末端ペプチドと相互作用していることが示されていた。そこで、その応用としてこれらのペプチド領域を他のタンパク質に付加することで、DDのように不溶性画分を洗浄後に弱い界面活性剤を含む溶液での抽出操作で簡便に精製できるようになるかをホモオリゴマー酵素で調べた。四量体酵素では活性を保ったまま低溶解性化し、その不溶性画分を洗浄後にBrijの様な弱い界面活性剤により高純度の酵素として抽出精製できることが示された。 大腸菌BL21株でオペロン全体の遺伝子の発現を試みた。T7プロモーターの下流に組み込んだ発現系では、親菌で見られたグリセロール資化での1,3-プロパンジオール生産に加えて、プロパンジオールの資化も検出できなかった。各代謝酵素の活性を確認できたので、遺伝子は発現しており、大腸菌BL21株がビタミンB12の取込みがネックになっていると考えられた。つまり、この系の応用にはB12の取込みの改善が重要であることも示された。 これらと並行して、pduオルガネラタンパク質の相互作用を網羅的に調べるために、それぞれの遺伝子をクローン化した。さらにN末やC末にタグをもつ発現系の構築を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は四量体酵素の各サブユニットにジオールデヒドラターゼ(DD) のβサブユニットのN 末端ペプチドを付加することで非常に簡便に活性を有する酵素を精製できることとオルガネラ酵素がシステムを形成し、PduOのN末触媒ドメインがこのシステム機能に重要であることを明らかにした。さらに、オルガネラの応用につながるオルガネラオペロン遺伝子の発現やグリセロール代謝で不活性化を受けずらいグリセロールデヒドラターゼ遺伝子との共発現、各オルガネラ遺伝子のクローン化と発現などを進めた。ここまではおおむね順調であったが、共発現用に作成したベクターでの遺伝子の発現効率が低かったり、この代謝のカギとなるビタミンB12の取込みが悪いなどの問題点がでてきている。このために、進展がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
オルガネラ酵素群の組み込みに中心的な役割を果たすことが示されているジオールデヒドラターゼ(DD)、その中でも集合体形成に重要な役割が示されているDDのβおよびγサブユニットのN 末端ペプチドとクローン化して発現系を構築したオルガネラタンパク質との相互作用をまず網羅的に検索する。相互作用が見られたタンパク質ではさらに欠失変異株を作成するなどして、相互作用部位の同定を進めてゆき、ひいてはオルガネラへの効率的な組み込み法の確立をめざす。 それと同時に、DDのβおよびγサブユニットのN 末端ペプチドの応用では、C末端へそれらの領域を付加するなどして、低溶解性化による簡便な精製法の二量体酵素での実現をめざす。 また、クローン化したオルガネラ遺伝子を連結することで、オルガネラの大腸菌での効率的な発現系を作成する。また、ビタミンB12の取り込みもオルガネラの応用に重要であるので、B12の取り込み効率の良い大腸菌での発現をおこない、化成品生産へのオルガネラの利用への道を開く。
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次年度の研究費の使用計画 |
発現ベクターの発現効率などの問題のため、予定していた発現プラスミドの構築に必要な試薬の購入や塩基配列の解析の委託を一部見送った。そのため残額が生じた。つきましては、繰り越した研究費は、プラスミドの構築と確認と試薬の購入費用や配列解析の委託費用に充当する予定である。
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