研究概要 |
本研究では,二酸化炭素を還元しメタノール等の次世代型低炭素燃料を生成する人工光合成システムの確立を目指し,光エネルギーで駆動する二酸化炭素の分子変換機能を持つ光捕集分子-人工補酵素-ギ酸脱水素酵素複合体を設計・創製する. 本年度はギ酸脱水素酵素を用いた二酸化炭素のギ酸への変換反応に最適な人工補酵素分子を構築した.具体的には1,1'-ジアルキル-4,4'-ビピリジニウム塩及び1,1'-ジアルキル-2,2'-ビピリジニウム塩を基本骨格とし,イオン性置換基を導入した分子を合成した. 次に合成した人工補酵素分子の第一還元電位を電気化学的手法を用いて測定した結果,置換基の種類に関わらず第一還元電位は変化しないことを明らかにした. 最後に人工補酵素を用い,ギ酸脱水素酵素を用いた二酸化炭素のギ酸への分子変換反応の機構を調べた.具体的にはジチオン酸ナトリウムで人工補酵素を還元し,ギ酸脱水素酵素存在下で二酸化炭素からギ酸への変換反応について,酵素反応速度論的に反応過程を解析した.この結果,置換基として陽イオン性アミノ基を導入した人工補酵素を用いることによって,ギ酸脱水素酵素を用いた二酸化炭素のギ酸への分子変換反応が加速されることを明らかにした. また平成24年度着手予定の光捕集分子-人工補酵素複合体について,光合成色素クロロフィルの誘導体と1,1'-ジアルキル-4,4'-ビピリジニウム塩を基盤とした人工補酵素とを配位結合を介して結合することにより合成し,光化学的性質を蛍光分光法を用いて明らかにした.その結果,光捕集分子から人工補酵素部位への効率的な光誘起電子移動反応が進行していることが分かった.
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