研究概要 |
葉緑体やシアノバクテリアの光化学系II(PSII)は20種類のサブユニットから構成される膜タンパク質複合体であり、光エネルギーを利用して水を酸化し、プラストキノンを還元する。PSII複合体の中心にあるD1/D2ヘテロダイマーを単離して、光-水分解反応機構を最小の単位で解析するため、中温性シアノバクテリアSynechococcus elongatus PCC 7942株を宿主として、好熱性シアノバクテリアThermosynechococcus vulcanus由来のD1, D2タンパク質を発現することを目的とした。 PSIIのD1およびD2タンパク質をコードする3つのpsbAおよび2つのpsbD遺伝子の中で、最も発現しているpsbAIおよびpsbDI遺伝子をT. vulcanusの相同遺伝子によって置換した。一連の形質転換操作はrps12媒介遺伝子置換法に従って行った。まずPSII内部アンテナタンパク質CP47のC末端にHistagを付加し、PSIIのアフィニティー精製を可能とした。成熟型のD1タンパク質のC末端側の16アミノ酸はプロテアーゼによるプロセシングで除去されるため、成熟型D1ΔCタンパク質を発現する変異株も作成した。 最終年度は、psbDI遺伝子の置換をより効率良く行うため、安定で強いプロモーターとしてPCC 7942株由来のセルロース合成酵素遺伝子のプロモーターを使用したrps12(6803)-kanカセットを作成した。psbDI遺伝子の破壊・置換を行った結果、このプロモーターが機能していることが確認された。 最終的には重複するpsbA, psbD遺伝子を欠失させ、耐熱性D1,D2タンパク質だけを発現している組換え株からD1/D2ヘテロダイマーの単離が可能になると期待できる。
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