研究課題/領域番号 |
23560954
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木原 尚 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60243911)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | アブレータ / TPS / 多孔質 / 非平衡流 / 高エンタルピ―流 |
研究概要 |
初年度は軽量アブレータの制作とその断熱特性を取得することを中心にし,またそこで得られた特性を数値計算に取り込むことを目的に行ってきた.まず,作成については今までの方法により比重レベルで数%の誤差で作成が可能になった.一般的なに宇宙機の熱防御システム(Thermal Protection System TPS)に用いられるカーボンフェノリックアブレータは多孔質であり,特に本研究で対象としている軽量アブレータは空隙率が大きく,含浸している樹脂の熱分解ガスがアブレータ内を流動することで,エネルギーを輸送することが考えられた.実験的には内部温度を詳細に計測することによりその効果をとらえ,数値計算により確認した.また,アブレータの透過率の比等方性についても計測により確認した.また,これを利用して実際のオペレーションの解析も行い,比較検討を行った.現在のところ当初の予定通りに,実験において当初の予定通りではあるが,窒素ガスにおける加熱実験しか行っておらず,地球大気への検証という意味では不十分であり,来年度の課題である.社会に対する研究成果の発信においても,国内シンポジウム等発表3件,国際会議2件,論文(proceedings含む)2本,と当初の予定より多くの発信を行うことができた.予算執行においては,当初予定していたものと同等の物が比較的安価に購入出来たり,予定していたもののデモンストレーションを行ったところ自分たちの環境では性能が出せないことが判明したりしたので,申請時の物品とは異なったものを購入している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ほぼ,計画通りに進んでいるが,アブレータの作成において,比重0.3に関しては,実績にも示した通り比重にして数%程度の精度で作成できるようになっているが,0.5,0.8などの他の比重についてはほとんど試していない.この点は遅れているといえる.しかしながら,主な対象は軽量アブレータであるので,比較的比重の大きなものについては試す程度しか予定していない.また,X線を用いた観察についても未だ行っていないが,準備ができ観察するだけの状態になっており,借りる装置との日程調整のみとなっている.主にアブレータ表面から内部への熱伝導の様子をとらえるために,内部温度の変化の様子を実験的に捕えることを目標に表面温度と内部の数点における温度計測を行い,温度計測手法の確立に重点を置いていた.表面温度の測定には放射温度計を用いているが,プラズマからの激しい発光中に置ける測定のために,その影響を受けないような測定素子の検証も行った.内部温度は熱電対を用いているが,プラズマの影響やアブレータの電導性(ほぼ炭素)のため,計測はかなり困難であったが,窒化ホウ素で熱電対の表面をコーティングすることにより精度よく温度を測れるようになった.実験環境を模擬している数値計算においては,実験に先んじて,空気流における解析を行えるようになり,また,アブレータ内部の熱分解ガスの内部流動による影響をとらえることができアブレータの作成方法への新しい指針を得ることができている.その上アブレータの基材となる炭素繊維の異方性の効果(実測値の導入)なども組み込みつつあり,こちらにおいては若干の当初の予定より進んでいるといえる.総合的にみると実験的にやや遅れが見られるといった状況である.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策については,実験についてのやや遅れがあるものの,現在までも当初の研究計画書からあまりずれることなく行われてきている.一番の遅れはX線による確認が行われていないことであるが,これについては近々行うことになっている.遅らせていた原因は,実験後のテストピースの様子を確認する必要から,使用後のテストピースがある程度の数が必要であったからである. これまでの経緯より,大きな軌道修正の必要は無いと考えている.しかし,現在まで行ってきて,実験環境において,アブレータ内部からの熱分解ガスの自由流への流出の時間変化がかなり大きいように感じられる.実験時の写真からも衝撃波の位置がアブレータ内部の熱分解ガスの噴出により変動しているように見える.そのことを示す数値計算結果は得られているが,このことを確認するために,アブレータ模型前方の衝撃波層の分光計測を中心に行って行く必要が出てきた. H23年度では当初の予定の物品が当方の使用環境において十分な性能が出なかったために他のものに切り替えたため残額が生じたが,上記のように新たに時間を追って分光ができるような分光器が必要となる.比較的安価な小型の分光器を用いてスペクトルの時間変化をとらえることを行う.
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次年度の研究費の使用計画 |
今後の研究の推進方策にも示したように,アブレータ試験片をアーク加熱風洞へ投入した後の衝撃波層からの輻射光の時間変動の様子を分光するためのポータブルではあるが,広範囲の分光が一度にでき,且つデータのサンプル周期の比較的早い小型分光器を昨年度の残額をもとに購入する予定である.これは,アブレータ内部から分光を行うため,光ファイバーを含めた光学系を消耗品として使用する必要がある.次年度からは試験気体を空気にして行うことも予定しているので,アーク加熱風洞の電極の購入が必要となる.また,X線を用いた撮影や熱重量測定,高精度の熱伝導係数測定などいくつかの学内外の機器の使用料も必要となる.旅費については少なくとも国内2回(機械学会年会・衝撃波シンポジウム)は使う予定である.
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