研究課題
本年度は,IKAROSの実データを再現する簡易モデル(縮退モデル)の導出と検証を実施した.昨年までに得ていた簡易モデルに比して,本年度は適切なレベルの正確性を確保するため,非線形性を残した光圧=姿勢カップリングを有する運動方程式を導出した.これは,IKAROSのフライトデータと比較して,より良好な一致を見ている.セイルの形状と姿勢運動の間は高々3つのパラメータで結ばれることを解析的に示し,IKAROSの実運用実績を用いて実証した.さらに,この定式化から,姿勢運動上の要請からセイル表面特性の設計要求を導出できることが示唆されることを導いた.これにより,ソーラーセイルの製造精度や表面光学特性分布設計,許容変形度などの構造設計上のクライテリアと,ソーラーセイル機の根幹機能である,セイルによる軌道制御能力を,セイルの向きを変更・維持する能力(姿勢制御能力)を介して,結びつけることができる.すなわち,単なるソーラーセイルの姿勢挙動の理解に留まらず,ソーラーセイル機の設計論へと展開できる可能性を示した.これらの結果は,American Astronautical Society(AAS)学会にて発表し,またTransaction of JSASS,Aerospace Technology Japan,AIAA Journal of Guidance, Dynamics and Control等の学会誌に投稿した.
1: 当初の計画以上に進展している
本年度の主要作業であった縮退モデルの定式化が計画通りに実施できた.実施した内容は「研究実績の概要」を参照のこと.セイルの設計論へと結び付けられる成果を得る見込みがこの時点で得られたことが,当初計画を超える成果であった.
H25年度は,前年度までの研究成果のまとめの時期と位置付ける.前年までの作業が順調に進んだため,本研究の最も大きかったスケジュールリスク要因はなくなった.本年度は,研究会やセミナー等を通じた細部の検討と,学会発表に注力する.また,ソーラーセイルの設計論,将来の新たなソーラーセイルミッションへの応用に資する検討を実施したい.
当初計画通り,以下の項目に使用する計画である.消耗品13万,旅費100万(国内学会発表 10万,国際学会発表 90万),その他(謝金,学会誌投稿料等)30万.ただし,謝金は,計算作業の外注に替えることも検討する.なお,次年度使用額(13.3万円)の発生については,本年の旅費,物品費,その他経費等の各費目がそれぞれ計画より若干少額で済んだことによるものであり,次年度有効に使用する予定である.
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)
ActaAstronautica
巻: Vol.10, Issue 2 ページ: 183-188
10.1016/j.actaastro.2012.03.032
Transaction of JSASS, Aerospace Technology Japan
巻: Vol. 10, No. ists28 ページ: Po_4_7-Po_4_12