研究課題/領域番号 |
23560966
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
井関 俊夫 東京海洋大学, 海洋工学部, 教授 (70212959)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 波力発電 / 浮体運動 / 方向スペクトル / ベイズ推定 |
研究概要 |
本課題では、(1)理論的研究、(2) 動揺特性最適化システムの開発、(3)模型試作と水槽実験による有効性の検証の3点を研究の目的として、浮体式波力発電システムの高効率化の基礎的研究を行っている。平成23年度の研究実績は以下のとおりである。1.理論的研究:浮体の動揺から周囲の波浪状況を推定する理論の確立を目的として、ベイズ波浪推定法の改良を行った。具体的には、浮体動揺応答関数の推定誤差を取り込む新しいベイズ型モデルを開発した。また、ベイズ波浪推定法を実際のコンテナ船の動揺に適用し、波浪レーダの推定結果と比較した。これらの結果を2本の論文にまとめ、ISOPE2012とOMAE2012の国際学会で発表する予定である。また、膨大な計算量を処理するために高性能デスクトップPCを購入し、計算コードの高速化(並列化)に着手した。2.動揺特性最適化システムの開発:波浪状況に応じて浮体の動揺特性を動的かつ省エネルギーで最適化する一つの方法として、直径の異なるパイプで構成されたスパー型海洋構造物を想定し、上下揺れの特性を動的に変更するシステムを検討した。さらに、このシステムで自励振動が発生可能かどうかをシミュレーション計算によって検証した。その結果、動揺特性の変更は可能であるが、自励振動を発生させるためには相当程度のエネルギーの投入が必要であることが分かった。3. 模型試作と水槽実験:アクリルパイプにより上記スパー型海洋構造物の小型模型を製作し、動揺特性を静的に変更することを検討した。水槽実験では固有周期および減衰係数を測定した結果、動揺特性の変更可能範囲は想定したものより狭く、広い周波数帯域の波浪に追従するには更なる改良が必要であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的研究では浮体運動応答関数の推定誤差をモデルに取り込んだ新しいベイズ推定法を開発し、船体動揺データに適用した結果を2編の論文にまとめた。模型試作および検証実験では、浮体動揺特性を変更できるアクリル模型を製作し、固有周期や減衰係数等の変更に関する基本的データの収集を行った。以上のことから、おおむね順調に進展していると言える。また、動的制御部分の開発に先立って、シミュレーション計算を実施した。その結果、自励振動の発生が困難であることがわかったので、平成24年度開発予定の動的動揺制御方式の改良が優先課題であると判明した。この点において次年度分を先取りした形となっている。その他に、平成23年度では、海外の開発研究動向調査としてスコットランドのEMEC、デンマークのLORCの訪問を計画したが、現地の実証実験設備が洋上にあり、旅費が高額となるため、本研究課題の方向性が固まってきた段階で、訪問先を絞って再度検討することとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究計画がおおむね達成できているので、当初の予定通り今後の研究を推進する。すなわち、1.模型による水槽実験:浮体運動から方向波スペクトルを推定する実験を開始する。2.浮体動揺特性変更方式の検討:平成23年度の研究結果と実機レベルでの実現性を考慮しつつ、模型レベルでの動揺特性変更方式を複数検討する。平成24年度では、浮体式波力発電システムは少数の複数浮体で構成されるのか、ユニット化された多数の浮体で構成されるのかを検討することが主要な課題となる。3.アルゴリズム開発:浮体動揺特性の動的制御と浮体動揺からの方向波スペクトルの推定が両立できるかどうかをコンピュータシミュレーションによって検証する。4.情報発信:得られた研究成果をまとめて日本船舶海洋工学会やOMAE(海洋工学および極地工学に関する国際会議)、ISOPE(国際海洋極地工学会議)等の国際学会で発表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の未使用の研究費については、平成24年度7月開催のOMAE2012等での論文発表旅費、改良版模型に搭載する加速度計および波高計の購入に使用する予定である。また、平成24年度の研究費については当初予定通り、容量式波高計4セットを購入して波高計アレイを製作し、水槽内の方向スペクトルを正確に推定できるシステムを構築する。
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