研究課題/領域番号 |
23560968
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
山本 茂広 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (60294261)
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研究分担者 |
橋本 岳 静岡大学, 工学部, 准教授 (60228418)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ステレオ / 画像計測 / 三次元 / 船舶 / 安全 |
研究概要 |
本研究は、船舶を安全に航行させるための次世代高度安全海上輸送システムの構築を目指し、その中核となるマシンビジョン技術、特に、3次元ステレオ画像計測技術を駆使して船舶やその他の障害物等の位置や速度を高精度に検出するシステムの開発を目指している。本システムは、一般的なステレオカメラによる3次元計測とは次の2点で異なっている。 一つは、2台のカメラ間の距離(ベースライン距離)に比べて計測対象物までの距離が大幅に長いことである。これは、システムを船舶に搭載する場合、カメラ間の距離が船幅によって制限され、せいぜい10~20mしか取れないのに対して、衝突防止の観点からは数キロメートル先の他船や障害物を計測する必要があるからである。すなわち、ベースライン距離の100倍以上の距離の対象物の位置計測を行う必要がある。このような条件では、わずかな視線方向の誤差が大きな計測誤差につながる。計測対象点の視線方向を高精度に求めるには、まず、高精度なカメラの内部、外部パラメータのキャリブレーションが欠かせない。そこで、本年度は民生用の中で最高画質クラスのビデオカメラを用意し、キャリブレーションを行った結果、その方法がほぼ確立され、ノウハウを蓄積することができた。この結果は、今後のすべての研究の基礎となるため非常に重要である。 本提案システムが一般的なステレオ計測と異なるもう一つの点は、船舶という極めてダイナミックな環境下で用いることである。つまり、波により船体自体が大きく動揺する(カメラの向きが大きく変わる)ことと、船体の微小振動やたわみ、膨張収縮などにより両カメラの向きが微小であっても変化することが考えられる。そこで、そのような動的環境に適応させるため、水平線を利用した船舶自体の姿勢計測と、船体の一部の既知座標を利用してカメラの微小方向変化を検出する手法を考案し、実験を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究はおおむね順調に遂行できていると考える。本研究の目的は、船舶の安全航行を補助するために、ステレオ画像計測技術を応用して海上画像から船舶や他の障害物を検出し、それらの位置を正確に計測、さらには、それらを追跡することにより針路や速度を求めることができるシステムの開発およびその性能評価である。このとき、研究実績の概要でも述べたとおり、船舶という特殊な環境下で正確な3次元位置計測を行うには、高精度なカメラの内部、外部パラメータのキャリブレーションが欠かせない。本年度はこのキャリブレーション手法の開発を行ったうえ、波による動揺などへの対応手法を考案し、研究の基礎部分を固めることができた。 交付申請書の研究実施計画と照らし合わせても、(1)カメラのキャリブレーション:実施済み、(2)画像データの取得:広範囲のデータの取得は出来ていないが、研究に必要なデータをその都度取得している、(3)画像処理手法等の検討:位置計測結果のフィードバックによる認識精度の向上と船舶の連続追跡については基礎手法を提案、船舶動揺への対応についても前述の通り検討済みであり、おおむね平成23年度の研究計画を達成することができた。 また、研究成果については、国際会議での口頭発表1件、国内学会での口頭発表1件、海外ジャーナルへの投稿1件(査読中)、国内学術誌への投稿1件(査読中)と、その都度順調に公表を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、当初の予定通りに研究を推進していく。本年度の基礎的な研究結果を踏まえて、それらを実証、必要があれば改良していくほか、交付申請書の実施計画でも述べたとおり、(1)サポートベクトルマシンなどの学習機構による船舶と海などの背景との識別精度の向上、(2)左右の画像間で対応点探索を行う際の高精度サブピクセルマッチング手法の採用、(3)連続フレーム間での時系列計測結果をカルマンフィルタ等により統合することによる位置計測精度の向上、(4)船舶の針路・速度を算出し航路を予測するシステムの検討などを行う。さらに市販の高速の画像処理ライブラリなどを利用することにより、研究遂行効率の改善とアルゴリズムの高速化・リアルタイム化などについても検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、実験用の機器・ソフトウェア等を揃えるのに物品費が多くなった一方で、大規模な画像データ取得を行わなかったため、実験補助者に対する謝金等の支出がなかった。また、論文を投稿したものの掲載がまだ決まらず、論文投稿料が支出されていないため、結果として31,935円の次年度使用額が発生した。 次年度は、この投稿料の支出に加え、本年度末に得られた研究成果も順次発表するため、成果発表のための旅費等も増える見込みである。また、画像データの取得・整理等のため謝金の支出も考えている。その他、研究遂行の効率を高めるため、画像の前処理等の基本的な処理を行える画像処理ソフトウェア(ライブラリ)とそれを動かすパソコンの購入を考えている。
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