研究課題/領域番号 |
23560969
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
段 智久 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (80314516)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 舶用燃料 / 代替燃料 / ジメチルエーテル / 重油 / 動粘度 / 揮発性液体動粘度測定 / 環境対応 / 大気汚染防止・対策 |
研究概要 |
本研究課題は,船舶主機関のディーゼルエンジンで使用される重質燃料(C重油)に着目し,ジメチルエーテル(DME)を混合することで噴霧や燃焼の特性を改善することを目的にしている.今年度は、揮発性物質を含有する燃料の動粘度計測手法を確立することを目的にした.その結果,以下の成果を得た.1.動粘度計測方法の確立毛細管式粘度計を可視化容器内に保持し,容器内をDMEの飽和蒸気圧力以上に加圧することで揮発を防ぎながら粘度を測定する装置を作製した.粘度計には不透明液体の粘度計測に適したキャノン社製のZeitfuchus粘度計を使用した.この粘度計を透明円筒セル(ポリカーボネイト素材もしくは石英素材,長さ330mm,外径76mm,厚さ5.5mm),円型フランジおよび長ボルトからなる圧力容器の中に保持した.被測定液体の温度は,粘度測定装置全体を恒温水槽に没入することで変化させた.2.DME混合燃料の動粘度測定被測定液体が加圧される影響を確認するために,粘度計校正用標準液によって加圧状態の動粘度計測を行った.その結果,セル内の雰囲気が加圧されることで毛細管粘度計内の被測定液体の流動性が向上し,計測される動粘度の値は真の値よりも小さくなることを得た.そこで各種の標準液を用いて,被測定液体の加圧の影響を補正する係数を求めた.その結果,圧力の関数として補正係数が求まることを得た.次に,DME混合燃料の動粘度を測定した.C重油の動粘度はDMEを混合することで劇的に低下し,燃料温度50℃の場合,低減率はDME10%で52%,20%で66%,30%で77%,40%で89%であり,DME混合による粘度変化は混合割合の絶対量に比例するわけではなく,逆指数関数的に急激に変化することを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,初年度は大気圧場で揮発性を有するジメチルエーテルが混合した重油の動粘度計測方法の確立を目的としたが,当初の計画通りに研究が進行した.成果として,混合燃料の温度やジメチルエーテル混合率を変化させた場合の動粘度測定結果を得ており,国際学会で口頭発表を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
混合燃料の動粘度がジメチルエーテルの混合率によって大きく変化することが得られたので,今後はこの特性を加味しながら,実ディーゼルエンジンでの燃焼特性を評価していく.燃料の動粘度が低下した場合,ディーゼルエンジンにおける燃料噴霧の微粒化特性は向上することが知られている.すわわち,粘度の低い液体ほど微粒化した際の燃料液滴径が小さくなるという知見が従来の研究で得られている.今年度研究から.ジメチルエーテルを混合することでC重油の動粘度が大きく低下することが得られているので,混合燃料の場合には微粒化特性の向上が望まれる.合わせて,ジメチルエーテルの化学的特性で燃焼改善が得られるかも検討を行っていく予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はエンジン解析が行えるようにすすめする.まず混合燃料においてジメチルエーテルとC重油の混合が完全に行えるような加圧型燃料タンクを作製する.くわえて,既存のエンジン(直噴式小型ディーゼルエンジン,予燃焼室式3気筒ディーゼルエンジン)を混合燃料使用可能なように小改造を行い,機関性能の測定を行う.機関性能としては,燃焼室および燃料の圧力履歴,排ガスエミッションの濃度を対象とする.これらの解析に必要な物品を購入する予定である.
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