研究課題/領域番号 |
23560969
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
段 智久 神戸大学, 海事科学研究科(研究院), 准教授 (80314516)
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キーワード | 船舶燃料 / 代替燃料 / ジメチルエーテル / 重油 / 排ガス / 環境対応 / 大気汚染防止・対策 / 動粘度計測 |
研究概要 |
本研究課題は,船舶主機関のディーゼルエンジンで使用される重質燃料(C重油)に着目し,ジメチルエーテル(DME)を混合することで噴霧や燃焼の特性を改善することを目的にしている.今年度は液化DMEを重質な燃料に溶解させる手法の確立を目標にした.その結果,以下の成果を得た. 1.液化DMEの溶解法の確立 加圧型燃料タンクを縦型に分解できる形式とし,燃料溶解部分(内径200mm)とフランジ蓋部分(外径370mm)とした.DMEは燃料溶解部分の中に挿入した円環式パイプ細管からバブリングによって混入する形式とし,この混合燃料の中で攪拌羽根を回転させながら,DMEとC重油が均一な混合状態になるように配慮した.混合燃料を抜き取って混合状態を確認した結果,良好な混合状態の形成を確認できた.これにより,液化DMEを比較的均質に重質な燃料に溶解させるシステムを構築できた. 2.エンジンにおける燃焼試験 小型直接噴射式ディーゼルエンジンにおいてDME/C重油混合燃料の燃焼試験を行った.DMEのC重油に対する混合率を重量割合で0,20,40%と変化させ,混合率が燃焼状況に与える影響を解析した.その結果,不完全燃焼成分である一酸化炭素(高負荷条件で60%削減),未燃炭化水素(同条件で60%削減),スモーク(同条件で35%削減)がDME混合率に比例して低減できることを明らかにした.また,二酸化炭素の排出量も,高負荷条件では低減できることを明らかにした.さらに従来の燃料微粒化に関する研究から,燃料動粘度は噴霧の微粒化特性に大きく影響を与えることが知られている.そこでC重油100%とC重油70%DME30%の動粘度がほぼ同一となる燃料温度(前者90℃,後者50℃)でもエンジン燃焼解析を行った.その結果排気性能改善に液化DME混合が有効であることを得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の二年目では,ジメチルエーテルを重質な燃料に溶解させる手法の確立を目標としたが,当初の計画通りに研究が進行した.研究成果として,・ジメチルエーテル混合率を変化させた場合のエンジン燃焼解析,・燃料動粘度をC重油と混合燃料で一致させた時のエンジン燃焼解析を行うことができた.これらの成果によって,学術雑誌に2編の論文投稿,国際学会で2編,国内学会で2編の口頭発表を行うことができた.また昨年度の研究成果を学術雑誌に投稿し,その学術論文について学会賞を受賞することが内定している.
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究成果として,C重油に液化ジメチルエーテルを混合することで,エンジン燃焼において不完全燃焼成分の大幅な削減が可能となることを得た.今後はより大型のエンジンで同様の燃焼解析を行っていく予定である.特に未燃焼成分への影響のうち,微粒子状物質(PM)の改善効果を明らかにする.PMは,燃料の燃焼時に形成される固形すす粒子(ドライスートDS)と未燃炭化水素の凝縮成分(可溶性有機成分SOF)等からなるが,ジメチルエーテル混合にどのような効果があるのかを明らかにする.
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は,研究の総括が行えるようにエンジン燃焼解析を遂行する.既存の直噴式小型ディーゼルエンジンでの燃焼解析を終えたので,より大型の予燃焼室式3気筒ディーゼルエンジンで燃焼解析を行い,ジメチルエーテルの燃焼改善効果を明らかにする.機関性能としては,燃焼室および燃料の圧力履歴,排ガスエミッションの濃度を対象とする.これらの解析に必要な物品を購入する予定である.
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