研究課題/領域番号 |
23560975
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
居駒 知樹 日本大学, 理工学部, 准教授 (50302625)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 垂直軸型水車 / 可変ピッチ / 負荷試験 / 強制回転試験 / パワー係数 |
研究概要 |
すでに製作されていた水車模型にモーターを取り付けたり,ブレードを交換したりすることで可変ピッチ水車実験装置を改めて開発しなおした。回流水槽での実験を実施した。流れ中で回転する水車模型に対して回転中負荷試験により使用している水車そのものの性能を評価するためのデータを取得した。さらに,流れ中でのモーターを使用した強制回転試験により可変ピッチ翼のピッチ制御影響や翼断面そのものの性能を評価するためのデータを取得した。本実験結果より,開発して使用している水車模型は極めて強度を保てるようにしており,質量が大きいため,水車としての性能は低い。ただし,実験用であるので当初から予定されており研究遂行上の問題はない。同条件にて可変翼と固定ピッチ翼を比較すると,比較できないほどの性能差がある。現実的には固定翼では流れ中で回転できず,性能評価ができない。それに対して,負荷試験より,可変ピッチ翼水車では,周速比が小さい場合と大きな場合とで可変ピッチ角の制御範囲が大きく異なることを実証した。周速比が小さい,あるいは停止状態から回転をスタートさせるためには,±30度程度での制御がよく,周速比が大きくなると,制御範囲は小さくなる。ただし,パワー係数は実験の範囲では1.0m/sが最もよく,1.2m/sよりも水車効率が高いことがわかった。このことから推察するに,低速の流れ中においても十分なチューニングが可能である可能性がある。さらに,モーターによる流れ中強制回転実験結果らは次のような結果を得た。パワー係数は負荷試験同様に,1.2m/sよりも1.0m/sあるいはそれ以下の流速中で最大となる可能性が示唆される。ここで明確な結論が出なかったのは,水車性能が良すぎるため,モーターパワーが追い付かず,ピーク周速比まで回転数を上げられなかったためである。可変ピッチの有用性がここからも示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
水槽実験により詳細データの取得については十分な成果が得られた。それは計測データから得られた可変ピッチ機構の有用性が実証されたことと,研究開発を遂行する上での実験模型,実験装置の問題点が明らかになった。これらの問題点を修正することで,より正確でかつ有用な実験データの取得が可能となると考える。CFD計算での水車性能の評価については,計算効率を上げるためのプログラムのカスタマイズが進んだ。今後は数値計算による基本性能評価も実施可能である。特に回転中でピッチ可変角度の幅を変更できるようにした。水槽実験では回転中にピッチ制御角の変更できないため,数値計算により水車の起動から水流速変化に伴う可変ピッチ角の変更による水車性能向上の検討が行えるようなった。平成23年度は実質的な検討結果は出ていないが,次年度に実施する。数値計算手法に渦影響を考慮した境界要素法による流体力,水車性能評価プログラムを開発した。完成度は低いが,回転する水車のトルク性能やそれからパワー係数を求めるための計算プログラムを整備した。これにより,水車を強制回転させた場合の水車効率を理論的に推定できるようにした。現時点では定性的に実験結果を説明できている。平静23年度の達成度としては十分であり,次年度にプログラムの整備をさらに進める。全体としては次年度につなげるためのデータ取得,プログラム整備が十分に進められたと評価できる。ただし,当初目標としていた日本周辺海域での潮流・海流エネルギー賦存量把握については進めることができなかった。平成24年度には各機関から流れの観測データを取得しGISにてデータベースを独自に構築していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
水車模型は現状では直径30cmである。これを50cm程度まで大きくした水車模型を製作し,これまで同様の水槽実験を実施する。水槽実験での流速が1.0m/s前後であり,実際には実機スケールの流速と変わりない。流れ中の性能評価にはレイノルズ数影響などを考慮する必要がある。実験模型はよりスケールが大きい方が良いためである。また,現状は3枚翼であるが,可変ピッチ水車の利点を生かすためには翼枚数を増やす必要があると考えている。そのため,翼キャンバーが短くなり過ぎないように,やはり水車模型を大きくする必要がある。大きくした模型により,レイノルズ数影響を実験的に考察するとともに,翼枚数を5枚~7枚程度に増加させた場合の水車性能を平成23年度と同様に調べる。数値計算において,CFDプログラムを使用して,水槽実験結果との比較から,より複雑な挙動を示す水車の数値計算に対する検証を実施する。これを基に,CFDによる数値計算を系統的に実施することで,水槽実験で対応できない計測項目を含めて,水車性能,周辺流場特性,流体荷重特性を考察し,水車設置に伴う強度・経済性を考察するためのデータを取得する。また,境界要素法による理論計算を実質的に可能とするために,さらにプログラムの整備を行う。CFD計算は計算時間を要するために,境界要素法による計算でさらに系統的な結果を整備して周速比に対するピッチ制御角の最適化を進めるための環境を整備する。本研究と東北地方の震災復興をからめ,岩手県などの自治体に実機での実証試験を実施するための働きかけを行う。そのための,報告書を作成し,アピールする。将来的な実海域実証試験の準備を進める。そこで,東北地方太平洋沿岸域を中心に海流や潮流のデータベースを構築し,流パワーの賦存量マップを整備する。GISを利用する。そのために,本学助手の小泉佐和子を研究実施補助のために研究協力者とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
・水車模型の改造費が必要である。水車本体の直径を大きくするための費用として20万円を要する。・ブレード枚数を増やすために30万円を予定する。・海域データベース作成用に海図データおよび流況データを購入する。10万円程度の予定である。・成果発表用の出張旅費として国内の学会出張として6万円×1回程度で,6万円を予定する。また,研究協力者の旅費として6万円×2名で12万円を予定する。・残りは実験用消耗品と実験実施のための補助学生の交通費として予定する。
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