平成24年度から実施していた新型の可変ピッチ水車の水槽実験を完了させた。本モデルは直径50cmでブレードは6枚まで取り付け可能である。本モデルを用いて一様流れ中での水車パワー特性ならびに駆動性能評価試験を実施した。本試験により,水車モデルのブレード枚数や可変ピッチ幅の違いによる水車パワーをすべてまとめた。この結果をもとに,本モデルにおいてはブレード枚数が水車の最大パワー係数に大きく影響しないものの,最大値をとる周速比はブレード枚数が増加するにしたがって小さくなることが分かった。また,水槽実験からピッチ制御幅は7度付近がよいことが示唆された。 これらの実験結果を参考に数値流体力学的手法(CFD計算)を適用し,主に3枚翼に設定した場合の水車性能をソリディティとピッチ制御幅の観点から数値実験によって検討した。その結果,最高パワーを得られるソリディティは0.29程度であった。その際の最大水車効率は55%となり,極めて高い性能を発揮できることを示した。 本研究ではCFD計算によって極めて高性能な水車設定の可能性を示すことができた。これをもとに将来的な実用化の可能性を検証するために,必ずしも流況が好条件でない海域を設定して年間の発電量を試算した。その結果,年間の平均流速が0.8m/s程度,最大でも1.7m/sの海域において,直径およびブレード長さが1mの水車(本研究での最適モデル)1機で年期待値136Wとなる。これは10倍の規模で水車を設置すれば単純に1.36kWの発電能力を平均的に期待できることになる。あくまでも年平均出力であるので,定格出力はさらに大きく設定できることになる。 本研究によって,極めて好条件でない流況条件の海域でも格段に発電量を増大させることができることを提示した。今後はこれを実海域で実証することを計画している。
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