研究概要 |
漁船用レシプロ機関,発電機,レシプロコンプレッサなど機関室内の複数機械設備を対象とした状態監視システムの高精度化が目的である.平成22年度まで基盤研究(C)採択課題「超音波振動による漁船機関に最適な次世代型状態監視システムの開発」にて実施した駆動中の漁船用レシプロ機関から発する超音波振動および低周波振動を非接触方式のパラボラマイクロホンにより簡便に計測し,潤滑油性状の劣化,機関に作用する危険なトルクリッチ状態を推定する手法に今回提案する「パラボラマイクロホン」と「波形分離」の手法を取入れることで機関室にて複数台稼動する機械設備の状態監視を同時かつ高精度化に行えるシステムの実用化を行っている.本提案手法は単一のパラボラマイクを用いることで上記課題を解決することが可能となった.複数の機械設備から生じる合成波形からパラボラマイクとフーリエ逆変換を用いた波形分離を行なうことで状態監視対象の機械設備のみの周波数成分を抽出することが可能となり,ノイズ源の多い機関室内での実用的な状態監視が可能となった.本提案課題に関連する技術について2件の特許出願を行っている.既存漁船に高精度化された本状態監視システムを導入することにより潤滑油性状,危険なトルクリッチ状態および機械要素の監視が容易かつ確実となることで適切なメンテナンス時期の決定により機関負荷低減による燃料消費量の改善,船体抵抗の予測,機関燃焼状態の改善によりCO2削減にも期待でき環境に優しく,かつ無駄を省いた省エネルギー,省人,省力型漁船に転換することが可能となっている.平成25年度は水産大学校の練習船を使用し機関の潤滑油性状,危険なトルクリッチ状態および発電機,コンプレッサなどの機械設備に対して波形分離を適用し船舶に対する状態監視の高精度化を検証し,実用化を図るための乗船実験を行い,その有効性を確認している.
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