研究課題/領域番号 |
23560987
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
佐藤 晃 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (40305008)
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キーワード | 廃棄物地下保存・処分 / X線CTスキャナー / 地中貯留 / CO2 |
研究概要 |
放射性廃棄物の地層処分やCO2地中貯留では深度300m~700m程度の大深度岩盤が利用対象である。このような計画を安全に遂行するためには10MPaを超えるような高封圧環境下での水あるいはCO2といった流体の流動現象ならびに対象岩盤の亀裂進展といった破壊現象の高精度評価法の確立が必要不可欠である。 本研究年度においては,空隙局所領域での物質の移動、滞留、貯留解析に主眼を置いて研究を実施した岩石内部での空隙・亀裂の幾何学情報構造は、物質移行問題および巨視的な破壊に至るまでの亀裂進展問題において実際の現象が起きる場となる。したがって、これらの情報を元に、大深度あるいは超臨界環境といった高圧特殊環境下での空隙内での物質移行試験および貯留試験を実施し、μフォーカスX線CTスキャナにより空隙局所領域での物質の移動、滞留、貯留の様子を可視化するために、新たにヒストグラム差分法を開発し,実際の岩石試料への適用性について検討するとともに、岩石構成粒子スケールでの汚染物質あるいはCO2が岩石内部へ滞留量の評価およびそのメカニズムについて考察した。 その結果,比較的密度分解能の低いμフォーカスX線CTスキャナでは抽出が困難であった微小空隙内部でのわずかな密度変化を精度良く抽出することに成功し,このことから空隙内部でのCO2の状態の把握に成功した。特に,空隙内部でCO2が帯水層内部に囲まれながら存在することを初めて可視化し,そのネットワークを具体的に示すことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の特徴は、代表的な非破壊検査技術の一つである産業用とμフォーカスX線CTスキャナを組み合わせたハイブリッド評価を実施できる点にあり、かつ、高封圧特殊環境下に於いても流動特性、岩石内部構造を可視化および分析が可能である点にある。これより、岩盤を構成する粒子レベルのミクロスケールから岩盤マスとしてのマクロスケールまで連続した岩盤の評価が可能になり、かつ、実際の地下環境にほぼ等しい条件での微細な空隙構造の観察と、そこで起きる流動・滞留現象の分析が可能となり、実験の再現性も確認できる。特に平成24年度においては主にμフォーカスX線CTを用いたミクロスケールの情報抽出法の開発に主眼を置いて研究を実施し,ヒストグラム差分法という新たな閾値決定法を開発し、多孔質岩石試料への適用性について検討した。その結果,既に産業用CTで得られた巨視的な流動現象解析結果と調和的な結果が得られ、かつ、空隙スケールでの2相流の流動現象の分析が可能となった。この成果は当初見込んでいた通りの結果であり、概ね順調に研究が進行していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
超長期的な岩盤の安定性を考えた場合、亀裂の進展、特にサブクリティカル的な亀裂進展の評価は重要である。この現象は亀裂先端の応力拡大係数に依存することから、本研究ではμフォーカスCTスキャナによる亀裂ネットワーク形状の測定評価法を確立するとともに、高封圧特殊環境下での圧力や物質の変化に伴う亀裂先端形状の変化と応力拡大係数との関係を明らかにする。さらに,このような亀裂ネットワーク内部をCO2あるいは他の汚染物質が流動する際の流動特性を種々の岩石試料を対象として分析を行い、岩石構成粒子スケールでの汚染物質あるいはCO2が岩石内部へ滞留量の評価およびそのメカニズムについて考察する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度までの研究結果により,高封圧条件下でμフォーカスCTによる撮影を実施するための加圧システムを構築した。しかし,これまでの実験結果により,多種岩石試料への適用性やスキャナー内でのハンドリングに問題があることが判明した。本年度は,より高精度な計測を実施するための加圧システムの改良に対して重点的に予算を使用する予定である。また,解析用ソフトのさらなるバージョンアップなど,より高精度な解析・分析が可能となるように予算を使用する予定である。
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