研究課題/領域番号 |
23560988
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研究機関 | 東北公益文科大学 |
研究代表者 |
古山 隆 東北公益文科大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90284546)
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キーワード | ASR / 貴金属 / レアメタル / 油化 / 浮遊選別 |
研究概要 |
自動車に使用されているパラジウムは排気ガスを処理する触媒または電子部品に含まれている。通常、触媒はマフラー内にあることから、廃自動車をシュレッダー処理する前に手で取り外されている。よって、ASRに存在するパラジウムは主に電子部品由来であると考えられる。即ち、パラジウムは微細な状態で賦存していると予測されることから、空気選別では浮上物に、ふるい分けではふるい下産物に濃縮されていると推察される。そこで、平成24年度は九州メタル産業㈱のASR処理プラントのジグザグ空気選別機の浮上物(試料A)、箱型空気選別機の浮上物(試料B)、および箱型空気選別の沈下物を2 mm幅のスリットでふるい分けたふるい下産物(試料C)に対してパラジウムの賦存状況を調査した。 採取された各産物の試料は2 mmおよび1 mmでふるい分けを行い、-2+1 mm産物および-1 mm産物を調整した。はじめに、-1 mm産物については高周波誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-AES:Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)により定量分析を行った。分析は、試料を500 ℃で1時間熱処理した後に酸で溶解し、溶解液をICP-AESで分析した。その結果、パラジウムについては各試料中にはほとんど含まれていないことが分かった。一方、文献調査によりパラジウムは銅(Cu)やニッケル(Ni)を母材としメッキまたは複合化されている場合がある。そこで、金属片が多く見られる試料Cの+2 mm産物から32個の金属片を任意に抽出し、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer:走査電子顕微鏡)による同定分析を行った。その結果、ニッケルと銅の合金の上にパラジウムと金の合金の層を持つ金属があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
対象する貴金属をパラジウムに変更してその分布状況を調べることから本年度の研究を始めたが、調査の結果、ASR中においてパラジウムは微細な粒子ではなくCuやNiの表面にメッキとして使用されていることが分かった。本研究ではASR中の可燃分を油化することにより貴金属を相対的に油化残渣側に濃縮させ、浮遊選別法により回収することを目的としているが、浮遊選別は微細な粒子状のものを取り扱う選別方法である。このため、今後対象とする貴金属は平成23年度に調査した金および銀に再度変更した。しかしながら、学内業務が多忙であっため、平成24年度は専ら油化および浮遊選別の実験に使用するためのサンプルの作製および調整しかできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行えなかった有機溶剤によるASRの油化に関する実験を行う。使用する有機溶剤はC重油および廃潤滑油を用いる。また、脱塩素化処理中の温度-圧力特性の把握および脱塩素化率を明確にするための実験を行う。次に、油化残渣に対して浮遊選別法による貴金属の回収を試みる。さらに、目的とするレアメタル(Nd)に対して、ASR中の分布状況を調査すると共に、油化試験および浮遊選別試験を行い、最適な回収条件を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度記述したように、ASRの油化実験の回数が予定より多くなる見込みでありために浮遊選別機は購入せず、装置の購入は行わず、油化実験における貴金属・レアメタルの分析費に研究費の大半を充当する。なお、浮遊選別に関する実験では装置を所有している研究機関のものを借用する。残りの研究費については、研究の打合せや試料採取等の出張費やポータブルリアクターに関する消耗品等に使用する。
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