【最終年度に実施した研究の成果】 油化実験を行う前に、ASRの可燃分の分析を行った。なお、ASRは九州メタル産業㈱の廃自動車処理工程で排出されるジグザグ空気選別機浮上産物(以後、軽質ASRと称す)およびジグザグ空気選別機沈下産物(以後、重質ASRと称す)を対象とした。軽質ASRは+20mm産物と-1mm産物を、重質ASRについては-15+6mm産物、-6+2mm産物および-2mm産物を調整した。分析の結果、軽質ASR+20mm産物と-1mm産物の可燃分はそれぞれ52.2%と29.3%であった。重質ASR-15+6mm産物、-6+2mm産物および-2mm産物の可燃分はそれぞれ22.1%、11.1%、4.5%であった。これ等の結果から、可燃分が多い軽質ASRを油化実験の試料にすることにした。 軽質ASRに含まれるプラスチックは主にウレタン、ポリプロピレン、ABS樹脂などの軽質プラスチックである。そこで、これらのプラスチックに対して有機溶媒を用いた油化実験を行った。実験装置には耐圧硝子工業㈱社製のポータブルリアクターTPR-1(容器サイズ:120cm3)を用いた。実験は有機溶剤(エンジンオイル)49.75 gとプラスチック試料(市販のウレタン、ポリプロピレン、ABS樹脂)0.25gを混合し、撹拌羽根の回転数を600rpmに設定してバッチ式で行った。その結果、ウレタンとポリプロピレンはエンジンオイルの中で250℃で10分間加熱すると全て溶解することが分かった。なお、ABS樹脂は300℃で10分間加熱してもほとんど溶解しなかった。これらの結果から、軽質ASR中のウレタンやポリプロピレンに対しては有機溶剤によって油化が行え、また、含まれている貴金属やレアメタルの重量割合を相対的に増加させられることが分かった。
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