研究課題/領域番号 |
23560992
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
難波 徳郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80218073)
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研究分担者 |
紅野 安彦 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90283035)
崎田 真一 岡山大学, 環境管理センター, 助教 (50379814)
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キーワード | 下水処理汚泥 / 焼却灰 / ガラス / リン / ケミカルリサイクル |
研究概要 |
本研究では,下水処理汚泥の焼却灰をガラス化し,酸処理を行うことで,含有されるリンの再資源化を試みた。なお,リンを化学肥料として再資源化することを想定した場合,アルミニウムは土壌中でリンと不溶性の塩を形成し,植物の生育を阻害することが知られている。単純な回収量だけではなく,リンをアルミニウムと分離・回収することが望ましい。 本研究では,国内2箇所の下水処理施設から排出された汚泥の焼却灰(汚泥A, 汚泥B)を実験に用いた。また,汚泥AにSiO2を添加(重量比で汚泥A:SiO2= 9:1, 8:2, 7:3)した系についても実験を行った。溶融条件は1,500℃-30 min,大気雰囲気,アルミナ坩堝,バッチ量10 gで行った。溶融後,プレス急冷によりガラス化した。作製したガラスを150 μm以下に粉砕し,塩酸25 mlに浸した後に,吸引ろ過により固液分離を行った。 酸処理の経時変化から,汚泥Aと汚泥Bを用いたガラスではSiO2の溶解再析出が起きていることが示唆された。しかし,溶解再析出の挙動には違いがみられ,CaO含有量が異なることによる塩基度の相違が原因と考えられる。 汚泥AにSiO2を添加することで,優先的にAl2O3を固体側に残すことができた。特に,汚泥A:SiO2= 7:3の試料ではAl2O3の溶出率は4%となり,ほぼ完全に不溶固体中に取り込むことができた。しかし,SiO2添加により,Al2O3と同時にP2O5を含めたその他の成分も大幅に溶出率が低下していた。リンの回収率を高くするためには更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はリンとアルミニウムを分離することができる処理条件の探索を行った。ガラス化した汚泥から,アルミニウムをほぼ完全に溶出させることができる条件を見出すことができた。これより,「概ね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
汚泥中のSiO2成分は,分相により不溶化し,固体状態で回収されているのではなく,溶解再析出により固体化していることが明らかとなった。また,CaO含有量により溶解挙動が異なることが示唆されたため,次年度はCaO添加などにより,汚泥ガラスの塩基度を調整し,溶出挙動を制御し,これによりリンとアルミニウムの効率的な分離を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品:原料試薬,るつぼ,発熱体,耐火れんがなどを購入予定。 旅費:学会等に参加し,最新の研究動向を調査すると共に,研究成果の発表を行う。
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